シシーニョが叶えたもう一つの夢
試合終了直後、シシーニョと城後寿は互いの健闘を称えあった【写真:舩木渉】
試合が終わると、城後は近くにいたシシーニョのもとへ歩み寄り何か言葉をかけた。シシーニョもそれに笑顔で応じる。結果こそ明暗分かれたが、2人の間には幸せな時間が流れていた。
「たまたま近くにいたので。『お疲れ』って話をしたら、『元気?』って日本語で返ってきた。発音も良くなっていたので、さすがだなと思いました。国籍は違うんですけれども、僕はもう友達だと思っているので、そういう友達ができて嬉しいなと思います。お互いまた高いレベルのところでまたプレーできればいいですね」
シシーニョも城後と同じピッチで相見えた12分間を感慨深げ振り返る。
「彼がサイドラインにたった時、『城後が入ってくるんだ』と気づいた。その時は勝つために試合に集中していたけど、城後とプレーできるんだって。ついに同じピッチに立てた」
「素晴らしい瞬間だったけど、負けてしまったからすごく幸せな気分ではないね」と、1-2で敗れた結果を悔しがりつつも、1人のサッカー少年に戻ったような笑顔は印象的だった。
実はシシーニョ、今回の福岡戦でもうひとつ夢を叶えた。試合後の取材エリアで話を聞いている途中、城後が近づいてくると「ちょっと待ってて」と言い残して自分のバッグを取りに戻った。自分が持っているユニフォームにサインが欲しいとのことだった。
それは以前にも話していた、福岡とSNSを通してコンタクトを取った際に自腹で購入した城後のユニフォームだった。2人で別室へ移動し、しっかりとサインを入れてもらいご満悦の様子。来日時から望んでいた、「城後のユニフォームにサインをもらう」という夢が実現した瞬間だった。
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