欧州の舞台で通用しなかった守備。バランスに再考の余地あり
ボス新監督は、相手との力の差を前に、[4-3-3]を維持して攻守のバランスを修正しようとはせず、組織の秩序を少し壊しても攻撃に比重を置こうとした。ドルトムントはマドリーを相手にして、昨季とはまるで違うアイデンティティをピッチ上に示したのだ。
しかしそうした敢闘精神が、結果に繋がるかどうかはまた別の問題である。布陣変更から10分程は、相手のゴールに迫ることができた。中盤でゲッツェがボールを奪ってカウンターを仕掛け、高い位置でヴァイグルがクリアボールを拾って攻撃に転じるなど、中盤が厚みを増した。
だが70分が過ぎる頃には、マドリーもドルトムントの前がかりな姿勢に慣れてしまった。3バックの両脇のスペースを使われ、アタッキングサードへの侵入を許すようになる。それでもボス監督は、あくまで攻撃的だった。
76分、ゲッツェに代えてクリスティアン・プリシッチを投入。アメリカ代表FWはヤルモレンコのいた右サイドに入り、ウクライナ代表FWはセカンドトップの位置へ。ところが2度目の布陣変更も束の間、中央で縦パスを簡単に通され、C・ロナウドに決定的な3点目を決められてしまう。
普段のブンデスリーガではそこまで目立たない組織的守備の粗さが、CLの舞台では浮き彫りになる。グループステージ第1戦のトッテナム戦で浮かび上がった課題は、まだ解決されていないようだ。
1-3でマドリー戦を落とし、グループHで2連敗となったドルトムント。残りは4試合。決勝トーナメント進出のためには、強豪ひしめく欧州の舞台における攻守のバランスを再考する必要がありそうだ。
(取材・文:本田千尋)
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