齋藤が持つ唯一無二の武器。日本代表の貴重なオプションに
しかしながら、齋藤には純粋に彼らとポジションが被るという理由で見限ることができない持ち味がある。ワイドな位置でボールを持てば積極的に仕掛け、高確率でクロスやシュートに持ち込む、純然たるドリブラーの気質とその切れ味は、海外組のライバルと比べても特筆に値するものだ。
ここからW杯本大会のメンバー発表までの8ヶ月間、ハリルホジッチ監督が選考で重視するのは主力のベースになる要素だけではない。いかに戦術的なオプションを増やし、対戦相手や時間帯に応じた戦いを準備できるか。アルジェリア代表でも大会直前に当時チャンピオンシップ(イングランド2部)のレスターに所属していたリヤド・マフレズを抜擢したのもそうした理由からだ。
そうした意味から考えて、昨年11月を最後に代表から遠ざかっている齋藤にも少なからずチャンスはあったはずだ。明日のニュージーランド戦とハイチ戦に向けたメンバー発表のリストに名前が載る予定だったかどうかは定かではないが、順当なら東アジアE-1サッカー選手権でチャンスが与えられるチャンスはかなり高かったはずだ。
思い出すのは2014年のブラジルW杯。2013年に韓国で行われた東アジアカップで優勝に貢献した齋藤はW杯の最終メンバーに選ばれた。期待されたのは後半の点を取りたい時間帯でドリブルを武器に攻撃に勢いをもたらし、決定的なチャンスを作り出すこと。そのために練習では大いにアピールしていたはずだが、勝負の時間帯でも当時のアルベルト・ザッケローニ監督から投入の声がかかることはなかった。
最もチャンスがあったのはグループステージ第2戦のギリシャ戦だろう。[4-2-3-1]で1トップに大迫勇也、2列目に大久保嘉人、本田圭佑、岡崎慎司が並ぶ布陣でスタートした日本だが、自陣で守備を固めるギリシャを攻め崩せず、後半から長谷部誠を遠藤保仁に代え、57分には大迫を下げて香川真司が投入されたものの、打開し切れないまま時間が経過した。しかし、結局3枚目の交代カードは切られないまま、0-0で試合終了のホイッスルが吹かれたのだ。