「考える時間を少しもらえれば、みんな『家族なんだ』と思い出す」(クロップ)
しかし、コウチーニョがトップレベルのフットボーラーだというのは、いまさら分かったことではない。素晴らしい選手でなければ、3度にわたるバルセロナからのオファーはなかっただろうし、この夏のような移籍騒動も起きていない。今回編集部から依頼を受けたのは、「ゴタゴタがあったうえで結果的に残留したコウチーニョは、チームやサポーターに受け入れてもらえるのか? そして、輝きを取り戻せるのか?」という内容である。
結論からいえば、どちらについても答えは「イエス」となる。後者については、すでに述べたとおり。このブラジル代表が非凡な才能の持ち主であることは間違いなく、リーグでもトップクラスの輝きをすでに取り戻していた。それでは前者、つまり問題を起こしたコウチーニョをチームやサポーターは受け入れることができたのか。
試合前に記者が集うスタジアム内のラウンジで、地元紙『リバプール・エコー』でリバプール番を務めるジェームズ・ピアース記者にサポーターの反応について聞いてみた。
「キミも知ってのとおり、この国のフットボールファンはすぐにものを忘れるからね(笑)。3日前のリーグカップの時も、序盤こそ静かだったが、その後はサポーターたちが声を張り上げてコウチーニョに声援を送った。いいパフォーマンスをしていれば、当然そうなるよね」と、予想どおりの答えが返ってきた。
この日、最初にコウチーニョコールが起こったのは、前半13分のことだった。その後は幾度にもわたり、リバプールファンたちはスカッドに戻ってきたエースの名前を歌い続けた。これにはユルゲン・クロップ監督も喜んでいた。
「サポーターとフィル・コウチーニョの関係を物語っている。チャンピオンズリーグ(CL)のセビージャ戦もそうだった。残り15分、20分くらいで登場して、アンフィールドがどのようなリアクションを見せるか分からなかった。しかし実際はアンフィールドが彼を後押しした。本当にそれを感じることができた」
「だから私はフットボールが大好きなんだ。我々も人間だから、万事が万事に同意するわけではないが、考える時間を少しもらえれば、みんな『家族なんだ』と思い出す。サポーターたちのリアクションは、まさにそれだった。誰もがあの瞬間が大好きで、フィルをサポートした。フットボーラーとしてサッカーに集中し、最高のパフォーマンスを発揮できる環境を与えてくれた」