64分、香川投入。スコアはすでに…
香川真司が呼ばれたのは64分。試合が終わるまでまだ30分近くの時間があったが、ボルシア・ドルトムントの勝利は確定的だった。電光掲示板に映し出されていたスコアは5-0。“新鋭”マキシミリアン・フィリップの2ゴールと、エースFWピエール=エメリク・オーバメヤンのハットトリックで、ボルシアMGを突き放していた。よほどのことがない限り、逆転劇は起こり得ない。ブンデスリーガ第6節。スタジアムのテンションも穏やかなハイを保って、ゲームは終盤に突入しようとしていた。
右ウイングのクリスティアン・プリシッチに代わって、背番号23はピッチに入った。
「試合はこれから続くので、少しでもアピールするっていう気持ちを持ちながら、試合に入りました」
しかし5-0と決定的に点差が開いた状況で、チームの勢いも落ち着いていた中では、なかなか「アピールする」ことは難しかったようだ。
「もちろん自分1人でやるサッカーではないので、5-0になっちゃうと、やっぱりちょっと一転して落ちちゃうところはあるし、精度も落ちちゃうところはあるので、それはしようがないですし。ただ、自分はそういう中でどれだけ、やれることをやらなきゃいけないですし、そういう中でバランスを見ながら、行くところは行きたかったですし、点を取るところは取りたかったですけど。まあ、それは残念ながら、結果としては付いてこなかったですけど」
そのまま右ウイングに入った香川。しかしアウトサイドに張らず、どちらかと言うと内側にポジションを取った。そこには先発したマリオ・ゲッツェがいたが、背番号10が下がり気味になることで、両選手はバランスを取ろうとしたようだ。
香川は、ボールを持てばサイドに展開し、エリアの中に入っていくことを意識した。だが周囲はテンションの落ち着いた仲間たち。固い守備ブロックを崩し、虎視眈々とゴールを狙う時間帯は過ぎ去っていた。空回りとまでは行かなくとも、背番号23を中心に、連動性が発揮されることはなかった。