これまで今季ノーゴール。「内心では不安と戦う日々だった」
思い出されるのは2月25日の開幕戦。先制点と決勝点を齋藤にアシストされ、2‐3の逆転負けを喫した浦和レッズのミハイロ・ペトロヴィッチ前監督は、試合後にこんな言葉を残している。
「マリノスに負けたというより、齋藤学選手に負けました」
左サイドを主戦場として、相手が間合いを詰めれば高速ドリブルで置き去りにして、距離を取れば味方へのパスを含めて変幻自在な攻撃を仕掛ける。開幕直後は文字通り“無双”の存在だった。
ゴールも時間の問題と誰もが思った。しかし、14戦連続無敗で上位に顔を出した夏場もゴールだけは遠かった。PKを止められた末に引き分けた、7月29日の清水エスパルス戦では思わず天を仰いだ。
「あまり携帯を触っていないんですよ」
胸中に秘めてきた思いを、齋藤はレイソル戦後にふと漏らしている。携帯を開いてニュースなどを見れば「齋藤、依然としてノーゴール」などといった見出しが飛び込んでくるからだと自嘲気味に笑った。
「今年ノーゴールのままだったらどうしよう、という思いも少なからずあった。内心では不安と戦う日々だったし、今日のゴールよりも簡単なシュートがいままで何本もあった。これで解決するわけじゃないけれども、ここから乗っていけるかどうかは僕にかかっていると思うので」
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