今季から主将に就任。中村俊輔の「10番」も引き継ぐ
昨シーズンに自己最多の10ゴールをあげたエースが、出場24試合目にしてようやく決めた今シーズン初ゴール。誰もが待ち焦がれたシーンの訪れに、日産スタジアムのピッチには笑顔の輪ができあがった。
「本当に練習通りに入った感じだった。取れるときは絶対にくると思っていたけど、それにしてもいままでノーゴールだった選手が決めるようなゴールじゃないですよね」
祝福に駆けつけてきた一人、右サイドバックとして6試合ぶりに先発した金井貢史も笑う。公私ともに仲のいい、ジュニアユースおよびユースのひとつ先輩は齋藤が努力を積み重ねる姿を見守ってきた。
「どこかに点を取れない焦りというか、悩んでいる部分があったはずだし、だからこそ居残ってシュート練習をずっとしていたと思う」
その日のコンディションにもよるが、15分から20分ほどグラウンドに残ってシュートを打ち続ける。数あるパターンのひとつがレイソル戦で決めた、左45度から巻くような軌道を描かせる一撃だった。
オフにはヨーロッパへの移籍を模索し、開幕前のキャンプには一時的に練習生として参加した。最終的には残留した過程で、小学生からひと筋で育ってきたマリノスに抱く愛を再確認できた。
再契約の席で打診されたキャプテン就任を快諾。そのうえで、ジュビロ磐田に移籍したレジェンド、中村俊輔の象徴だった「10番」を引き継ぎたいと申し出た。自ら背負った重い使命を、しかし、金井は慮る。
「僕にとって(齋藤)学は学。キャプテンで『10番』を背負っているからといって、接し方が変わるわけでもない。アイツ自身が考えすぎているのならばよくないことなので、チームを背負いすぎないように、少しでも軽減できるようにサポートしていくのがいいかなと思ってきた。
たとえば全体のシュート練習でアイツが決めたら、『やっと入ったね』と茶々を入れることが自分の役目というか。チームが勝っていたからいじることができたし、何よりもアイツのドリブルは相手も気にして、人数をかけてカバーするから他の選手へのマークが空く部分もあったから」