ピンポイント補強で大幅戦力アップ。今季こそリーグ優勝への期待大
ジョゼ・モウリーニョ政権1年目の昨季、マンチェスター・ユナイテッドはリーグ戦を6位で終えたが、リーグカップとヨーロッパリーグ(EL)を制し、チャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得という最低限の目標は達成した。就任2年目となる今季の目標は、2012/13シーズン以来遠ざかっているリーグ優勝とCLを制すことだ。
そのために、今夏の移籍市場ではロメル・ルカク、ネマニャ・マティッチ、ビクトル・リンデロフの3人を獲得してチーム力を増強した。いずれも弱点だったポジションの選手であり、モウリーニョらしい確実なピンポイント補強である。
高さ・強さ・速さの三拍子を兼ね備えたルカクは、すでにリーグ戦4試合で4ゴールを挙げて新エースとしての力を示した。また、昨季途中に膝の靭帯損傷を負って離脱中のズラタン・イブラヒモビッチとの再契約も決まり、ストライカーの選手層はさらに厚くなっている。
マーカス・ラッシュフォード、アントニー・マルシャルの2人の若手アタッカーの爆発もユナイテッドの覇権奪回に必要不可欠であり、両者は激しいレギュラー争いを繰り広げながら好調を維持している。また、トップ下やサイドなど多くのポジションをこなすことができるヘンリク・ムヒタリアンがプレミアリーグに適応して4試合で5アシストを記録するなど、攻撃陣はポジティブな要素で溢れている。
モウリーニョの愛弟子マティッチの獲得は中盤の層を厚くするだけではなく、ポール・ポグバの守備負担を軽減し、より攻撃的な役割に専念させられるようになった。29歳のMFに4470万ユーロ(約58億円)の移籍金は高すぎるという声もあるが、中盤での守備力強化とポグバの覚醒を同時に実現させた実力を考慮すれば安い買い物だったかもしれない。
マティッチは早くもチームにとって代えのきかない存在となっている。今季のユナイテッドの生命線になりうる中盤のボール奪取力は、アンデル・エレーラやマイケル・キャリックでは遠く及ばない。過密日程でタフなシーズンとなることが予想されるため、マティッチのコンディションを考慮しながら戦うことが、モウリーニョ監督に課せられた今季のミッションのひとつになる。
リンデロフの加入もチームの守備力の強化につながるだろう。現時点ではプレミアリーグへの適応に苦しんでいる印象だが、スウェーデン代表やベンフィカで見せていたポテンシャルの高さに疑いはない。エリック・バイリー、フィル・ジョーンズとは違ったタイプのCBであることも、対戦相手によってメンバーを変える指揮官の好みに合致している。
プレミアリーグ開幕から4試合で3勝1分けと最高のスタートをきったユナイテッド。もはやウェイン・ルーニー退団の影響など微塵も感じさせない。コンディションに気を配ってこのまま好調を維持することも重要だが、負傷者が出るなど苦しくなった時にモウリーニョ監督がどのようなマネジメントでチームを鼓舞し、歓喜へ導くのか。戦力は十分なだけにカリスマ指揮官の手腕からも目が離せない。