失態続きの夏。フロントには批判渦巻くが…
バルセロナの今夏の補強戦略における失態は、ある選手の退団から始まった。
その選手とは、2億2200万ユーロ(約290億円)という誰にも想像のつかなかった史上最高額移籍金でパリ・サンジェルマン(PSG)へ旅立ったネイマールに他ならない。バルサは2013年から4年間チームの中心選手として活躍したチーム屈指のスターを放出してしまった。
ともなれば、当然批判を浴びることになるのが、ジョゼップ・マリア・バルトメウ会長ならびにクラブの強化スタッフとなる。批判は日を追うごと激しいものとなり、「BartomeuDimiteYa」(日本語で「バルトメウもう辞めてくれ」の意)というワードがツイッターの急上昇ワードになるほど、ファンの怒りは募っていった。
そしてその怒りは、ただネイマールの放出を避けられなかったことだけに対してのものだけではない。むしろ、PSGから得た大金をその後の補強活動を円滑にするものとしてポジティブにとらえる人もいた。つまりバルサのフロント陣が批判を浴びることになった主な理由は、そもそもの補強戦略の失敗と、資金をうまく使うえなかったことにあった。
ネイマールの後釜探しに奔走したバルサは、リバプールのブラジル代表MFフィリッペ・コウチーニョに狙いを定めた。クラブに移籍を志願するなど、コウチーニョ自身もバルサ行きに前向きな姿勢を示していたが、最終的に交渉は破談に終わった。アンヘル・ディ・マリアの獲得も結局は実現せず、フロントの迷走ぶりは明らかだった。
混迷の末バルサが獲得した主な選手は、ブラジル代表のMFパウリーニョとフランス代表FWウスマン・デンベレであった。前者は欧州レベルには程遠い中国リーグの広州恒大でプレーしていた29歳のプレーヤーであり、テクニックやインテリジェンスよりもフィジカルタフネスを武器とする選手の獲得に4000万ユーロ(約52億円)もの大金が支払われたことで批判が相次いだ。
後者に関しては20歳と若く、高いクオリティを兼ね備えたプレーヤーであることは間違いないものの、1年前にドルトムントがたった1500万ユーロ(約19億円)で獲得した選手に、クラブ史上最高額となる1億500万ユーロ(約135億円)を支払ったことは当然批判の的となった。バルセロナはネイマールだけでなく、デンベレのケースでも交渉の拙さを露呈することとなった。
あまりの失態にエルネスト・バルベルデ新監督の就任が忘れ去られてしまっているほどだが、バルサ意外にもリーグ開幕戦から無失点で3連勝を飾るなど好調を維持している。スペイン・スーパー杯でレアル・マドリーに2連敗したとはいえ、“脱ネイマール・ロス”に向けて徐々にチーム状態は上向いている。
デンベレの陰に隠れた目玉補強の1人、ポルトガル代表DFネウソン・セメドは驚くべきスピードでバルサのスタイルに順応した。何年もカンプ・ノウで過ごしていたかのように右サイドを制圧し、アレイシ・ビダルを完全にベンチへと追いやった。ダニエウ・アウベス退団以降、長く懸案事項だった右サイドバック問題は解決に向かいそうだ。
2年ぶりのバルサ復帰を果たしたFWジェラール・デウロフェウも、イングランドやイタリアでの日々を通して成長した姿を見せ、貴重な戦力になっている。自分よりも大きな期待を背負って入団してきたデンベレとのポジション争いが、彼の中の何かを駆り立てているのだろうか。
バルサに数々のタイトルをもたらしたルイス・エンリケ前監督からチームを引き継いだバルベルデ監督は、早くもマネジメント力の高さを発揮してスター軍団を掌握した。MSNを軸としてチームを作っていくプランは崩壊してしまったが、今のところ何とか立て直すことができている。ファンのフロントへの怒りをよそに好スタートを切った新生バルサは、再びタイトルへの階段を上り始めたようだ。