唯一の希望はサンチェスの残留。補強は進まず穴だらけ
昨季まで19年間続いてきたチャンピオンズリーグ出場を逃したアーセナル。アーセン・ヴェンゲル監督は昨季終盤から導入した3-4-2-1を今季も継続していくことに決めたようだ。
このフォーメーションの生命線となるのは、エクトル・ベジェリンと新加入のセアド・コラシナツが担う両サイドだろう。1年間チームのクオリティを維持するためには、サイドで決定的な仕事ができる人材の補強を進めるべきだあったが、結局コラシナツしか獲得できなかった。とはいえシャルケから加入した筋骨隆々のファイターは持ち前の推進力を随所に発揮しており、すでに自身の獲得は間違いではないことを証明している。
昨季44失点を喫した守備陣の立て直しも今夏の課題であったはずだが、CBの補強はうまく進まず。4バックでは高い対人能力とカバーリング力を発揮していたシュコドラン・ムスタフィは3バックへの適応に苦しんでおり、今季限りでの現役引退を表明しているペア・メルテザッカーも身体的な衰えは否めず、年間を通しての活躍は厳しくなってしまった。
現状は守備の柱であるロラン・コシエルニーと、レンタルから復帰したロブ・ホールディング、サイドバックが本職のナチョ・モンレアルが3バックを構成しているが、計算できる控えはカラム・チェンバース以外にいない状況も大きな問題だ。守備陣はいつ崩壊してもおかしくない状況である。
そしてプレミアリーグ第3節でのリバプール戦で早くも困難な現実を突きつけられた。接戦が予想されたものの、蓋を開けてみれば0-4の大敗。開幕からの4試合ですでに2敗を喫しており、ヴェンゲル体制22年目は厳しい船出となってしまった。
今夏唯一の朗報は、アレクシス・サンチェスの残留だろう。移籍が濃厚とされたエースのモチベーションを維持できるかは気がかりだが、メスト・エジルとのコンビは攻撃の絶対的な軸であり、彼らが欠けてしまうと著しくクオリティが低下してしまう。
昨季新加入のルーカス・ペレスがことごとく期待を裏切った前線には、リヨンからフランス代表のアレクサンドル・ラカゼットを獲得した。しかし、マンチェスター・ユナイテッドのロメル・ルカクや、マンチェスター・シティのセルヒオ・アグエロとガブリエル・ジェズス、チェルシーのアルバロ・モラタ、トッテナムのハリー・ケインらと比べると小粒感は否めない。
とはいえ背番号9を与えられたラカゼットはプレミアリーグ開幕から4試合で2ゴールを奪って好スタートを切っている。フランス1部で3年連続20得点の実力を発揮できれば、代表でもチームメイトのオリビエ・ジルーとのポジション争いでも優位に立てるだろう。
ヴェンゲル監督はこのまま3バックを続けるのか、それとも別のフォーメーションを採用するのか。そして新戦力と既存の選手たちを組み合わせて魅力的な攻撃ユニットを作り、守備の不安を払拭できるか。CL出場権奪回を目指す戦いは前途多難だ。