なんとも不得手な失点後の試合運び
ワンツーを要求した味方に正確なリターンで応えたルイス・スアレスと、非常に速いパスアンドゴーから正確極まりないシュートを放ったメッシを褒めるべきシーンではある。だが問題はその前にあった。
攻守が入れ替わり速攻を喰らっていたユーベは、左サイドから組み立ててきた相手の攻撃を遅らせることに失敗し、帰陣が乱れた。中盤ではピャニッチが中央から少しやや左に流れたメッシに寄った一方、中に入れ替わろうとしていたベンタンクールの動きが遅れる。ユーベのCB陣の前にはぽっかりとスペースができており、メッシとスアレスにそこを使うイメージを描かれてしまった。
そして堅守からのカウンターというユーベの戦略プランは、先制点を食らった時点で崩れた。後半は当然逆襲に掛かるため、しっかり引いていた最終ラインの選手たちも前がかりになってしまう。
そんな形でバルセロナ相手にスペースを与えれば、攻撃を喰らうのは自明。おまけにデ・シーリオの故障で、右サイドバックにはMFのステファノ・ストゥラーロが緊急コンバートされる始末だ(シュテファン・リヒトシュタイナーはUEFAの選手登録リストから外されていた)。先制点を奪われて守備ブロックを前に上げなければならなくなった時点で、勝負は決してしまったのである。
それにしても、ゴールを奪われた後の試合運びは昨シーズンに引き続きなんと不得手なことか。昨季のユーベの堅守は、堅実に自陣に引いてコンパクトな守備組織を作ることで保たれていたもの。
同点に追いつくところまででエネルギーを消費し、足の止まった後半にレアル・マドリーに畳み掛けられたCL決勝と試合の流れは異なるが、相手を戦術にはめて先制点を奪わないと苦しいという点では共通している。8月のスーペルコッパ・イタリアーナでも、やはりラツィオに先制され最終的に敗れているのだ。
「ショックは引きずらないよ。今日の間違いを糧に、次からはもっとアグレッシブに戦ってゴールを奪うまでだ」とピャニッチは強気に語った。ただ、立て直しは効くのだろうか。
(文:神尾光臣)
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