「これ獲るしかないでしょ」。目指すはACL決勝の舞台
繰り返し続けたトライ&エラーは、徐々に流れを変える。高木自身、手応えをつかんだのは68分のワンプレーからだったという。左サイドでボールを持ち、内側へカットインして右足でクロスを上げた。結果的にゴールには結びつかなかったものの、興梠慎三の頭にピタリと合った会心の1本である。
「あのへんからようやく自分として試合の中で感覚を掴めてきているなという感じはあったから、いけそうだなというキッカケにはなった」と高木は振り返る。そしてこういった1つひとつのチャレンジが、86分の逆転ゴールにつながった。
「自分なんかはいい守備を持っているわけではないし、そういう部分で貢献できない分、やっぱり試合を決めるような点だったりアシストだったりというのが、毎試合1本でも出せればいい」
ミハイロ・ペトロヴィッチ前監督が成績不振で解任されたことからもわかる通り、今季ここまでは浦和にとって困難な時期が続いていた。その流れは堀孝史監督の存在によって変わりつつある。チーム全体の意思統一が進み、新しい戦い方も形になり始めた。
その象徴の1人が高木である。4バックを導入したJ1第25節の柏レイソル戦で今季2度目のリーグ戦先発を飾り、続くACLの川崎F戦でもスタメンに名を連ねてゴールという結果を残した。
「しっかり90分やりきれたところがまず良かったですし、その中でチームとしても結果を出せたし、個人としても結果を出せたので、今日はトータルして良かったと思います。リーグ戦を捨てていい理由なんて全くないですし、リーグ戦は本当にいけるところまで勝ち点を積み上げていくだけです。あとはACLは本当に『これ獲るしかないでしょ』という感じです。浦和の歴史としては(ACLベスト4以上の経験が)あるのかもしれないですけど、僕としてはこれだけ大きい大会で、ここまで勝ち進むということはなかなか経験としてないので、本当に最後、決勝までいきたいなと思っています」
雌伏の時を経てチャンスを掴んだ浦和の背番号13は、今まさに復活の時を迎えようとしている。物静かながら、口から発せられる言葉は力強く、自信に満ちていた。高木俊幸の2017年はまだまだ始まったばかりだ。
(取材・文:舩木渉)
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