開幕前にまさかの負傷離脱。サッカーができることへの感謝
劇的な決勝ゴールをアシストした森脇は「これ以上ない愛を込めて、優しいボールを僕は送ったつもり」と語る。そして「自分がフリーなのもわかったし、そこにだいたい蹴ってくれるかな」と感じていた高木とゴールまでのイメージはシンクロしていた。
「僕としては『中に折り返してくれ』というイメージでした。それくらい優しいボールを出せば、そんなに難しい折り返しではないかなと思ったので。自分としては僕がトシ(高木俊幸)に出して、トシが中に折り返して、それを中の選手が詰めるというイメージでしたけど、そのイメージをトシはいい意味で覆してくれたなと。非常にファンタスティックなゴールだったんじゃないかなと思いました」(森脇)
高木にとっても、ACL準決勝進出を決めるゴールは大きな意味を持つ。「自分に対してちょっとメッセージ性のあるゴールというか。怪我でチームに迷惑ばかりかけていて、今シーズンはあまりいいものが出せていなかった。ここから自分が何かやっていくぞ、というキッカケになるようなゴールでした」と、決意のこもった表情で話す。
今季は浦和入団以来、高木にとって最も厳しい1年と言ってもいいだろう。開幕前の自主トレーニング中に右足第5中足骨の疲労骨折を負い、手術からリハビリを経て公式戦復帰を果たしたのは5月10日のACLグループステージ最終節のFCソウル戦だった。
しかし、負傷から復帰しても出場機会はなかなか巡ってこない。天皇杯3回戦のロアッソ熊本戦で直接フリーキックを決めてチームを勝利に導く活躍はあったが、リーグ戦の出場は現時点で5試合のみ。ゴールはない。飛躍を期した浦和加入3年目は、過去最も出番の確保に苦しむシーズンになっている。
「こういう舞台に立てるというか、怪我から復帰して立たせてもらえるということに関して、まず感謝の気持ちと、やっぱりここで何かしら結果を残さなければいけないという気持ちはありました」
ACL準決勝進出のためには2ゴール以上を奪っての勝利が絶対条件だった浦和。その川崎F戦に出場する前から、高木はいつも以上に強い思いを抱いて準備してきた。それでも気合いが空回りしたのか、前半はなかなか持ち味を発揮できなかった。チームが主導権を握ろうとする中、存在感は薄い。
「前半は正直、自分の中では個人的な部分であまりいい流れを作れなかったというか、クロスも上げようとしても、右足で上げるクロスが読まれていたから、何回も(相手に)当たっていた。後半ちょっと縦に勝負して、(相手に)当たったとしてもコーナーキックを取れるということで、ちょっと自分の中でやり方を変えて良かった」