リーグ開幕時に補強ゼロ。駆け込みで帳尻合わせる
マンチェスター・シティやマンチェスター・ユナイテッドらプレミアリーグ優勝を狙うライバルチームが戦力強化に大規模な資金を投資する中で、毎年堅実な補強を進めている印象のトッテナム。だが、今季開幕までに獲得した新戦力はゼロだった。
トッテナムの大きな武器であったダニー・ローズとカイル・ウォーカーのイングランドを代表する両サイドバックも、後者がマンチェスター・シティに移籍したことでコンビ解散となってしまった。そして右サイドバックの穴を誰が埋めるのかにも大きな注目が集まった。
結局、最初に動いたのは移籍市場の締め切り8日前だった。そこから一気に5人の契約をまとめ、要所に必要最低限の補強を施した。クラブ史上最高額の4000万ポンド(約56億円)を費やしてアヤックスから獲得した若手DFダビンソン・サンチェスが今季最初の新戦力となった。
そしてウォーカーの抜けた穴を埋めるために、パリ・サンジェルマンからコートジボワール代表のセルジュ・オーリエを獲得。素行面に不安があるものの実力は折り紙つきで、右サイドバックの定位置をキーラン・トリッピアーと争うことになる。
スウォンジーから獲得した元スペイン代表FWフェルナンド・ジョレンテは、絶対的エースであるハリー・ケインの控えとして活躍の場を与えられることになりそうだ。昨季プレミアリーグで15得点を挙げた32歳は恵まれたフィジカルと高い技術を兼ね備えており、安定したパフォーマンスが期待できる。
2年連続で優勝争いに加わりながらもなかなかタイトルに手が届かないトッテナムだが、即戦力として補強したのはオーリエとジョレンテの2人のみと思われていた。しかし、実際は違ったようだ。アルゼンチンの名門エストゥディアンテスから引き抜いたDFファン・フォイは先行投資的な意味合いが強いものの、D・サンチェスはエバートン戦で3バックの中央を難なくこなしてポジティブな印象を残した。
とはいえ悲願の優勝を成し遂げるには、大きな伸びしろを残す昨季の主力たちの成長が不可欠だ。ケインを筆頭にデリ・アリ、ソン・フンミン、クリスティアン・エリクセンといった攻撃陣が非常に強力だからこそ、一段上のレベルに達した時に初めてタイトルのチャンスが見えてくる。
また、チャンピオンズリーグ(CL)ではレアル・マドリーやドルトムントと同組となり、決勝トーナメント進出に向けて厳しい戦いが予想される。優勝を目指すリーグ戦と並行しながら、いかに総合力を落とさないようメンバーをやりくりしていくかも今季の重要なポイントとなる。
序盤戦のトッテナムは調子がいいとは言えない。プレミアリーグは開幕から4試合で2勝1敗1分と出遅れてしまった。9日のエバートン戦は快勝したが、昨季とチームのベースが変わらないだけに、今こそ名将マウリシオ・ポチェッティーノの腕の見せどころである。