明確な補強方針。放出は控え組のみで戦力維持
昨季は国内リーグとチャンピオンズリーグ(CL)の2冠を達成。名実ともに欧州最強クラブとなったあるレアル・マドリーが、今夏の移籍市場を通して着手したのはメンバーの若返りだった。
史上初のCL連覇を果たしたマドリーの強みは、爆発的なパワーで他を圧倒する主力組のクオリティだけでなく、ベンチメンバーを含めたチーム全体の層の厚さにあった。そして、カリスマ性にあふれるジネディーヌ・ジダン監督は、巧みなローテーションでスター揃いのチームをコントロールしていた。
しかし、勝ち続けるマドリーにおいてジダン監督の起用法に不満を抱く選手がいなかったわけではない。ベテランDFペペは10年間過ごしたクラブを去りトルコのベジクタシュへ移籍した。さらにベンチ生活の長かったハメス・ロドリゲスはバイエルン・ミュンヘンへ、貴重なマルチプレーヤーだったダニーロはマンチェスター・シティへ、昨季公式戦通算20ゴールを達成するも継続的な出場機会を確保できなかったアルバロ・モラタはチェルシーに活躍の場を求めた。
この穴を埋めるべくして加入してきたのが、若く才能あふれる選手たちである。バルセロナとの争奪戦の末ベティスから獲得したダニ・セバージョスは、今夏のU-21欧州選手権でMVPに選ばれており、確かな実力と将来性を兼ね備えている。前述のペペの後釜として、ヘスス・バジェホがドイツのフランクフルトから2年ぶりにマドリー復帰を果たした。
最も話題を呼んだのは、19歳のテオ・エルナンデスや17歳のヴィニシウス・ジュニオールら10代の選手たちとの契約だ。期限付き移籍先のアラベスからアトレティコ・マドリーへ復帰が決まっていた前者は、首都の覇権を争う2クラブの間に存在する「お互いの選手を獲得してはいけない」という不可侵協定を破ってマドリーへ加入。長い間不在であったマルセロの控えとして迎えられている。
後者のチームへの加入は、FIFAが定める18歳未満の選手の国際移籍禁止の原則により、早くて2018/19シーズン以降となる。ヴィニシウスは、“新たなネイマール”と称される逸材で、その若さにして既にフラメンゴでトップチームデビューを果たしている。マドリーが同選手獲得のため支払った4000万ユーロ(約52億円)という金額が、期待の大きさを表している。
一方、退団が噂されたエースのクリスティアーノ・ロナウドやガレス・ベイルは何事もなかったかのように残留となった。昨季の主力組も軒並み残留となり、結局放出されたのはベンチを温めることの多かった選手たちのみ。大幅な戦力ダウンを避けることができた。
何人かの実力ある選手を放出しながらも、今季も十分な戦力を維持しているマドリーの今季の目標は、できる限り多くのタイトルを獲得することだろう。今季は出場停止中のC・ロナウドを含め、何人かの主力が揃わない状態で開幕スタートダッシュに失敗した。直近のリーグ戦は2戦連続ドローとなっており、チーム状態は必ずしも良いとは言えない。そこでジダン監督が新加入の若手選手たちをどのようにチームに組み込み、より高いレベルへと引き上げていくのかにも注目が集まる。