「これからはすべての選手がアピールする場なのかなと」(大島僚太)
マリノス戦のゴールシーンでは守備への意識を高く保ちながら、相手ゴール前に顔を出して、攻撃に厚みを加えようとしていた。結果として生まれた一撃がマリノスのリズムを狂わせ、3‐0の快勝を導いた。
初戦に負けたチームはアジア最終予選を突破できない、という悪しきジンクスを覆し、6大会連続6度目のワールドカップ切符を獲得して、ハリルジャパンは1年間に及ぶ長丁場の戦いを終えた。
ハイライトとなった8月31日のオーストラリア代表戦では、中盤の陣形は長谷部をアンカーに置く逆三角形型にスイッチ。インサイドハーフには山口蛍(セレッソ大阪)と井手口陽介(ガンバ大阪)が配された。
ともに猟犬をほうふつとさせる豊富な運動量とボール奪取術に長け、なおかつミドルシュートも得意とする。試合を決めたのはおそらくは歴史上で語り継がれていく、井手口のミドル弾だった。
一方でハリルホジッチ監督は、対戦相手の特徴によって起用する選手を変えていくさい配をふるう。サウジアラビア代表との最終戦では、インサイドハーフの一角で柴崎岳(ヘタフェ)を先発させた。
プレイメーカー型の選手も必要とされる状況になってくれば、殻を破りつつある大島も候補の一人に入る資格をもつだろう。大島も自らが舞台に立った、最終予選の行く末をテレビ越しに見守っていた。
「僕が出た試合以降は出ていないので、その意味では何て言うんですかね、ワールドカップへの出場は決まったので、これからはすべての選手がアピールする場なのかなと思います。(代表への思いは)強くなることでもないというか、常にあるものだと思っているので」
いまは目の前の仕事に集中する。J1では首位の鹿島アントラーズに勝ち点6ポイント差の2位に浮上。YBCルヴァンカップではベスト4に、天皇杯ではベスト16に勝ち残り、13日には準決勝進出をかけた浦和レッズとのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)準々決勝第2戦(埼玉スタジアム)に臨む。
「ACLでは第1戦でアウェイゴールを取られているので、戦い方が大事になってくる。その意味でも、マリノス戦を無失点で終えられたのはよかった。リーグ戦は上位を見ながら、食らいついていきたい」
フロンターレが悲願とする初タイトル獲得を視野に入れながら、中盤を率いる将軍の象徴となる「10番」を託されて2年目になる24歳は強くて怖い選手を目指してゆっくりと、少しずつ進化を遂げていく。
(取材・文:藤江直人)
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