「いますぐにでも普通に代表でやれると思うので」(中村憲剛)
1年前に課題としてあげた守備は、長足の進歩を見せている。マリノス戦で見せた球際の強さや献身ぶりは、決して突然変異的なものではない。より高みを見すえ、意識改革に取り組んできた成果でもあった。
そのうえで、マリノス戦では中村を絶賛させるビッグプレーも飛び出した。開始わずか14分。それまで5試合連続無失点を続けてきたマリノスの堅守に、風穴を開ける先制点を決めたのは大島だった。
左サイドを複数の選手で崩して、最後に抜け出したMF阿部浩之が低いクロスを入れる。FW小林悠が肩で落としたこぼれ球を、オーストラリア代表のDFミロシュ・デゲネクが慌ててクリアする。
しかし、デゲネクの体勢が不十分だったからか。小さくなったクリアは、ペナルティーエリアの左隅にいた大島の目の前に飛んでくる。その瞬間、ゴールまでの道筋がはっきりと見えた。
「自分のところですごく時間があったので、落ち着いて決めることができました。いちおうは狙いましたけど、上手く入ったと思います。今シーズンはずっとゴールできていなかったので、周りからも『そろそろだね』と言われていたので。ようやく取れてホッとしています」
淡々と振り返った大島だが、決して簡単なシュートではなかった。目の前に飛んでくるクリアに、ダイレクトで右足のインサイドを合わせて、なおかつゴール右隅に突き刺す。離れ業と形容してもいい。
大島に「そろそろだね」と言っていた一人でもある中村は、J1で140試合に出場しながら、通算で5ゴールにとどまっている大島に、ゴールへの意識をより強くもってほしいと望んでいた。
「早くゴールを取れというよりも、取れたら本当にすごい選手になれるので。得点に絡むことがもっとできたら、僚太は本当に日本でもトップの中盤の選手だと思う。いまでも十分に怖い選手だけど、そこに得点力がついてくればさらに怖さが出てくるし、いますぐにでも普通に代表でやれると思うので」
昨年7月13日、アルビレックス新潟とのセカンドステージ第3節で豪快なミドルシュートを叩き込んだときも、けがでスタンドでの観戦を強いられていた中村は檄を飛ばすように大島を称賛している。
「点を取ったら僚太はいいよ。ゴールに絡めるようになったら、アイツはすごい選手になっていく。アイツはあまり欲がないというか、欲を表に出さないタイプだから」