ベンチから試合を見守った香川が感じた課題
ベンチ入りはしたが、出番のなかった香川真司は、端的に試合を振り返る。
「逆に10人になったんでね。まあ、でもこっちのアイデアもなかったかなあ、と」
フライブルクは「10人になった」ことで、割り切って引いて、ゴールの前を固めてきた。そうやって耐え忍ぶ敵を崩せず前半を0-0で折り返すと、後半に入っても、試合展開は変わらない。恥も外聞もかなぐり捨てて籠もるフライブルクに対して、圧倒的にボールを保持するドルトムント。試合が終わると82パーセントの支配率を記録したが、結局ゴールを決めることはできなかった。後半だけで18本のシュートを打ったにもかかわらず。試合は0-0のスコアレスドローに終わった。
香川は「チームとして攻撃の形がなかなか上手くいっていないのかな」と感じた。
「この1試合に限らず、まあ、この3試合を見ても、もっとアイデアであったり、攻撃の質を高めていかないと、ちょっと、攻撃のバリエーションがなかったのかなと思いますけど」
ドルトムントは79分、新戦力のアンドリー・ヤルモレンコを前線に投入。しかしディナモ・キエフから加入したばかり背番号9は、まだまだチームに溶け込めていなかった。狭いスペースで縦パスをきっちり収める場面もあったが、そこから周囲の連動が始まることはなく、連係の確立はまだこれからのようである。
香川は言う。
「それは時間とともに、あとは、選手の意識と、まあ、一人一人のクオリティがもっとやはり要求されるっていう意味では、やっぱりデンベレが抜けたっていう意味ではね、もっと一人一人が、そこを打開していかないといけないと思います」
破壊的なドリブルを武器に、圧倒的な突破力の持ち主だったデンベレは、FCバルセロナに移籍した。マルコ・ロイスも復帰していない。フライブルク戦で先発したマキシミリアン・フィリップもクリスティアン・プリシッチも、決して能力の低いアタッカーではない。しかしフライブルクを相手に単独で打開することはできなかった。“個の力”という意味では、どうしてもデンベレ、ロイスに見劣りする。
昨季の後半戦に見られたような、特定の個に依存する状態を脱却するという意味でも、「一人一人のクオリティがもっとやはり要求される」のだろう。
“3つのアクシデント”という不運が重なりはしたが、まだまだボス体制が発展途上であることも示した、フライブルク戦だった。
(取材・文:本田千尋【フライブルク】)
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