香川の特別な存在価値。まずはコンディション回復を
オーストラリア戦でアンカーをつとめた長谷部誠を欠いたサウジアラビア戦では山口がアンカー、インサイドハーフには井手口とともに柴崎岳が起用された。しかし、スペインでたくましさを増した背番号7はポゼッションの預けどころとして何度か持ち味を出したものの、攻撃のスピードアップで周りと合わないシーンが目立ち、ラストパスも相手の守備にカットされるなど、期待ほどの存在感は発揮できなかった。
今回の柴崎の起用から想定できるのは、ハリルホジッチ監督が闇雲に縦を狙うだけでなく、中盤に攻撃のクオリティを高める選手を今後も起用していく余地があるということだ。もちろん相手がどんなチームであろうとスタンダードとして守備での貢献は求められるが、そこは香川も欧州で身につけているところであり、山口や井手口ほど先鋭的でなくとも要求される仕事をこなすのは可能だ。
もちろんチームの中で香川の存在価値を決定づけるのは攻撃面でのスペシャリティであり、チャンスメイクやゴール前のフィニッシュに質や決定力を加える仕事になる。香川自身が言うように、まずはドルトムントで出場時間を増やし、コンディションをしっかり上げることが最低限のノルマになる。そして、役割の似たライバルとの競争の中で、攻撃のスペシャリティを発揮していけるかが再び主力として重用されるためのカギになる。
10月にはハイチとニュージーランドをホームに迎えての親善試合が予定されているが、香川にとって真価を示すべきタイミングは欧州遠征が見込まれる11月だろう。そこで日本代表のスタンダードと個人のスペシャリティを発揮できるかどうかで、その後の位置づけも大きく変わってくるはずだ。
(取材・文:河治良幸)
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