絶好のテストとなったはずが…課題を露呈しただけの一戦に
とくにサウジアラビアの攻撃のスイッチになる両サイドハーフに対してはほぼマンマークで対処し、他の選手もリトリートしたら人をつかまえる方式。まるでマルセロ・ビエルサ監督のチームのようだった。
ポジションを動かさないオーストラリアに対して奏功した守り方だったが、サウジアラビアはポジションを流動化させて日本のマークを攪乱した。
サイドハーフが中へ、ときには反対サイドまで移動し、1トップも中盤へ引く、ボランチがサイドへ出る。日本はある程度は人についていくが、途中で離してしまうためボール周辺で数的不利が発生していた。
失点は約3分間もサウジアラビアにパスを回された後に喫している。ポジション流動性に対処できずに奪えず、最後は足が止まったところで玉突き的にマークを外されてフリーな選手につながれている。堅守速攻型とはいえ、さほど堅守でもないことを露呈したといえる。
先制されたときに何ができるか、日本にとっては絶好のテストとなったはずだ。ところが成果は全くといっていいほどなく攻撃にならなかった。
先発した岡崎は大迫のようにボールを収めることができず。大迫を欠くと攻撃に支障が出ることが明らかになった。後半から本田に代わった浅野も引かれてしまえばスピードを生かすスペースがない。
機能していなかった岡崎を杉本健勇に交代、最後の1枚は柴崎→久保裕也。実質FW4人の4-2-4としたが、個人技と縦勝負の4人ではスペースのない状態で連係は望めず、個で勝負できる機会もほとんどなし。井手口と山口では中盤のスペースを埋められないのでむしろサウジアラビアのカウンターで2失点目を食らうリスクのほうが大きくなっていた。最後は吉田麻也を上げてのハイクロスも及ばず。
前半を抑えて後半に勝負をかけてきたサウジアラビアは、さすがにホームなので戦い方を知っていた。
6万人のアウェイ、暑さの影響も大きかったと思う。采配のチグハグさは予選突破後のテストを兼ねているので仕方ないとしても、攻守に課題を露呈しただけの一戦となったのは残念。本大会までの時間は限られているが、つきつけられた課題を少しでもクリアしておきたい。
(文:西部謙司)
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