日本代表メンバーの当落線上にいるという危機感
最も悔やまれるのは、後半36分のプレーとなるのではないだろうか。自陣の中央でパスを受けた井手口が、右サイドにいた浅野へ、40メートル近いロングパスを正確無比なコントロールで通した。
対面にいるフィールドプレーヤーは、キャプテンのMFマーク・ミリガンだけ。ドリブルで仕掛けた浅野だったが、他の選手がプレスバックしてきたこともあり、シュートはおろかパスにももち込めなかった。
直後に井手口がスーパーゴールを決めて、試合の大勢は決した。後半44分に久保との交代でベンチに下がった浅野はチームメイトに労われながらも、安ど感と危機感とを胸中に同居させていた。
「日本としては(ロシア大会への)スタート位置に立つことができましたけど、僕ら選手としてはまだスタート地点にも立てていない。だからこそ、今日からしっかり準備しなきゃいけないと思っています」
一夜明けた9月1日にさいたま市内で行われた練習後に、本大会に臨む23人のメンバー争いでボーダーラインにいると強調した。眠りに就いた数時間のうちに、前夜の余韻を忘れ去った。
対戦相手が変わり、特徴やストロングポイントが変われば、ハリルホジッチ監督の思考回路も変わる。システムや起用される選手を含めて、カメレオンと比喩される戦い方を演じられる真骨頂でもある。
オーストラリアの最終ラインはアジリティーに欠ける、というスカウティングもあった。ゆえに浅野のスピードと、左サイドで先発した乾貴士(エイバル)が繰り出す変幻自在なドリブルが奏功した。
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