乾がベンチへ下がった後に生じた危険性
開始直後の3シーンであはるが、原口元気と交代する75分まで出場した乾は守備面でのポジションミスがなく、スライドやカウンターで一気に押し込まれた時のプレスバックといった戦術アクションのレベル(スピード)も日本代表の選手の中では突出していた。
逆に交代で入った原口は、確かに82分の井手口の追加点のきっかけとなる高い位置でのボール奪取という目に見える守備での結果を出しはしたが、レッキーを警戒するあまり長友と同ラインか時に長友よりも低い位置まで下がるなど疑問符の付く守備対応が散見された。
その守備対応はハリルホジッチ監督の指示だったのかもしれないが、完全にノープレッシャーとなったミリガンに対して井手口が無理やり突っ込んでいき簡単にはがされるシーンがあるなど、もしオーストラリアが試合終盤に単純なロングボール、クロスの放り込みを徹底してくれば日本の左サイド、原口の守備対応が穴となっていた危険性もある。
結局のところ、守備のプレッシングは前線の選手に複数名をつかまえることのできるポジショニングの概念、守備の戦術が存在しなければ成立しない。そして、このオーストラリア戦だけを見ても乾がそうしたものしっかりと持っていると確認できた。
高度なビルドアップと高度なプレッシングが日々しのぎを削り、フィジカル以上に頭のインテンシティが欧州屈指のレベルにあるスペインのラ・リーガでプレーすることの価値を乾貴士は証明している。
(文:小澤一郎)
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