監督について。どういう決断でも「僕自身は尊重したい」
オーストラリアに快勝した余韻が残る、試合後の公式会見。指揮官はおもむろにプライベートの問題を口にして、総括を終えただけで、質疑応答を受けることなく退席した。
「プライベートで大きな問題があった。そのことで、私はこの試合の前に帰国しようと思った。今日は選手たちのことを書いてほしい。たくさんの拍手で迎えられたことを、私は忘れない」
実は合宿初日から、長谷部は苦悩する胸のうちを指揮官から打ち明けられていた。長谷部との間に築かれた、揺るぎない信頼の二文字を象徴するエピソードだと言っていい。
「監督が(会見で)言っていました? 僕は個人的には監督とも話していますし、監督がそういうことを言ったのであれば言ってもいいと思いますけど。何て言うんですかね、身内のことでいますぐにでも帰りたい用事があるということを僕には打ち明けていました。
そういう状況でも、やはりいまは戦わなければいけないという、強い決意も感じました。人生のなかではサッカーよりも大切なことがあると僕は思っていますし、どういう決断をするのであれ、僕自身は尊重したいと思っています」
アジア2次予選の初戦で、シンガポールとまさかのスコアレスドローに終わった。最終予選の初戦では、UAE(アラブ首長国連邦)代表に悪夢の逆転負けを喫した。ともに埼玉スタジアムが舞台だった。
6大会連続6度目のワールドカップ切符を獲得するまでに刻まれた、波瀾万丈に富んだ軌跡はロシアの地で待つ笑顔への序章。さらに奇想天外な展開が待つことは必至のこの先でも、不動のキャプテン・長谷部が見せる頼れる背中は日本代表の羅針盤であり続ける。
(取材・文:藤江直人)
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