「代わりの利かない、極めて重要な存在だ」(ハリルホジッチ監督)
八百長疑惑でアギーレ前監督が解任され、2015年3月に急きょ就任したヴァイッド・ハリルホジッチ監督のもとでも、長谷部へ向けられる視線は変わらない。ボスニア・ヘルツェゴビナ出身で、いつもはフランス語を操る指揮官は、こう呼んではばからなかった。
「彼は私たちのキャプテンだ。代わりの利かない、極めて重要な存在だ」
だからこそ右ひざにメスを入れ、戦列を離れざるをえなかった今年3月にはチームに激震が走った。長谷部自身もチームメイトたちを信じて、懸命なリハビリを積んできた。ホームにオーストラリアを迎える大一番を、照準に置き続けてきた。
「けがは非常に難しいものだったので、自分の頭の中には8月31日がずっとありました。焦って痛みがぶり返すのもよくないし、リハビリの過程でうまくいかない時期もあったなかで、無理してきた部分もありました。けがをしていたときのことを考えると、試合に対しての思いが非常に強いです」
人事を尽くして天命を待つかのように、穏やかな表情と口調で抱負を語っていたのは8月30日のこと。帰国前のブンデスリーガでも2試合連続でフル出場。順調すぎる回復ぶりに、ハリルホジッチ監督も別の意味で心配を隠せなかった。
「少し体を休ませながら、コンディションを取り戻してほしい。急に多くのプレーをしてしまうと、筋肉系の問題が発生してしまう恐れがあるので、上手く休みをはさみながらやってほしい」
8月27日から埼玉県内で行われた事前合宿では、あえて別メニューを組ませて調整に配慮してきた。その時点でフォーメーションを初めて組む「4‐1‐4‐1」にして、アンカーを託す構想を指揮官は描いていたのだろう。
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