2010年以降担い続けている日本代表キャプテン
歓喜の瞬間の訪れを告げるホイッスルを、MF本田圭佑(パチューカ)はベンチで聞いていた。FW岡崎慎司(レスター・シティ)は終了直前になって、埼玉スタジアムのピッチに投入されていた。
7年前のワールドカップ南アフリカ大会をともに戦った盟友たちのなかで、オーストラリア代表との90分間を共有できたのはGK川島永嗣(FCメス)とDF長友佑都(インテル・ミラノ)しかいない。
自信満々に乗り込んだ地球の裏側で一敗地にまみれ、ふがいなさに涙した4年前のブラジル大会のほろ苦い記憶をもつ仲間たちも、いま現在の顔触れを見わたせば半分以下の10人に減っている。
時の移り変わりを否が応でも感じさせるなかで、MF長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)だけは変わらない。象徴でもあるキャプテンマークを左腕に巻き、ロシア行きを決めた喜びをかみしめた。
「年々プレッシャーは大きくなりますけどね。やはりキャプテンとして予選を戦って、4年前は本当に手探りのなかでやっていましたけど、今回に関してはより自分にできるだけ責任というか、プレッシャーをかけてやってきたつもりですし、その意味ではより喜びは大きいと思いますね。
一人でサッカーをするわけではないので、プレッシャーというとあれなんですけど。とにかくチームがいい形で試合に入れるとか、チームの雰囲気とか、監督とのコミュニケーションとか、さまざまな部分で自分ができることというのを常に考えて、やってきたつもりです」
南アフリカ大会が開幕する直前に、DF中澤佑二(横浜F・マリノス)に代わってキャプテンの座を託された。閉塞感を漂わせるチームに喝を入れるために、岡田武史監督が打ったカンフル剤だった。
一時は指揮官の解任論も吹き荒れた下馬評を覆し、メンバーとシステム変更をも触媒として化学反応を起こしたチームは鮮やかに生まれ変わる。グループリーグ突破を果たした快進撃は、いまもなお燦然と輝く。
大会後に誕生したアルベルト・ザッケローニ監督に率いられた日本代表でも、厚い信頼感を寄せられた。2014年8月に就任したハビエル・アギーレ監督も、長谷部の誠実な人柄に一目ぼれした。