普段はオープンな指揮官。イラン戦前はピリピリムード
日本の埼玉スタジアムが浅野拓磨や井手口陽介の連続ゴールで歓喜に包まれていた午後9時ごろ、韓国の視線はソウルワールドカップ競技場に注がれていた。
31日、2018年ロシアW杯アジア最終予選、イランとの試合を迎える韓国の雰囲気は確かに今までとは違った。勝ち点13でグループAの2位と、順位だけ見れば決して悪くない。だが、3位のウズベキスタンが勝ち点12、4位のシリア勝ち点9で韓国を猛追してきていた。この日、他会場の結果しだいで韓国には3位に落ちる可能性や、最終戦のウズベキスタンとの直接対決に運命を託さなければならない重圧が同時に混在した。
そんな中、迎えるイランはすでにW杯出場が決定。カルロス・ケイロス監督の下、堅いチームワークを実現し、最終予選8試合連続無失点という驚異的な守備力を誇っていた。韓国は昨年10月、このイランとの直接対決で0-1と完封負けを喫していた。アウェイでの10万人の観客の応援も影響したのかもしれないが、イランの守備を最後まで崩すことができず、痛い敗北を記録した。
韓国としてはどうしても勝ちたかった。成績不振やチームの管理に疎かだったウリ・シュティーリケ監督を更迭し、雰囲気を一新しようとした。切り出したカードは今年6月に韓国で開催されたU-20W杯で韓国代表を率いたシン・テヨン監督。攻撃的で、実利を求める指揮官に託されたミッションは“W杯出場切符の勝ち取り”以外になかった。
メディアに対してフレンドリーで、戦術に関するディスカッションを記者たちと楽しむシン監督だが、今回だけはそれを回避した。「メディアに露出されたら、ペルシア語で翻訳され我々の戦略があからさまになってしまう」というのが理由だった。
実際、彼は詳しい戦術はすべて非公開とした。21日にKリーグで活躍する国内メンバー15人を招集して行った簡単なトレーニングは公開したが、欧州組やJリーグでプレーする選手が集まった28日からはすべての練習が非公開になった。スターティングメンバーも試合当日まで徹底的に秘密だった。