酒井宏樹は攻守に抜群の存在感を発揮した【写真:Getty Images】
日本代表は31日、ロシアW杯アジア最終予選でオーストラリア代表と対戦して2-0で勝利。来年のW杯出場権を獲得した。
内田篤人が長期間離脱している間、サムライブルーの右サイドバックを誰が務めるべきかは常に議論されてきた。だが、その答えはもう見つかっているかもしれない。酒井宏樹こそ右サイドの支配者にふさわしい。
オーストラリア戦、右サイドバックとして先発出場した酒井宏樹は屈強なオーストラリアの選手たちから自由を奪った。守備では1対1の強さを見せただけでなく、味方のカバーにも懸命に走り、危険な芽を次々に摘んでいった。
機を見たオーバーラップで躊躇なく攻撃参加する積極性を残しつつ、守備でも相手を上回ったのである。サイドの攻撃で手詰まりになった際、最終ラインまでバックパスすることを読まれていたのはマイナスだったが、その戦術上の弱点を補って余りあるほど充実したプレーぶりだった。
柏レイソルからハノーファーへ移籍しても、酒井宏樹のイメージは「攻撃的サイドバック」であり、守備面の課題を指摘されることが多かった。攻撃でもクロス精度の低さや判断の甘さが改善点として挙げられ、内田の壁を突き破ることができていなかった。
しかし、マルセイユで1年間レギュラーを任されたことが、より成熟した総合力の高いサイドバックへと酒井宏樹を導いた。ドイツよりも個の戦いがクローズアップされやすいフランスリーグにおいて、ポジションを奪われないためには攻守における判断の精度とスピードを一段も二段も上のレベルに引き上げ、高度な個人戦術スキルや、守備技術を体得する必要があったに違いない。
今季の酒井宏樹はマルセイユでリーグ戦開幕から4試合中3試合に出場している。今季も右サイドバックの主軸であることに変わりはない。逆サイドにはフランス代表のパトリス・エヴラ、センターバックには同じくフランス代表のアディル・ラミ、チュニジア代表のアイメン・アブデヌールがおり、GKは経験豊富なフランス代表のスティーブ・マンダンダ、中盤にはブラジル代表のルイス・グスタボもいる。
そういった欧州でも一線級の選手たちに混じって、酒井宏樹がフランス屈指の名門でレギュラーを任されていることの価値は高く評価されるべきだろう。フランス代表やブラジル代表がいる中で、同じレベルで戦えると判断されているわけである。
日本代表の右サイドバックとして確固たる地位を築き始めているのには、成長と実力を裏付ける根拠があった。
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