細部にとことんまでこだわったゲームを
守備面で気がかりな点を挙げるとしたら、6月のイラク戦(テヘラン)で最終予選初先発を飾った代表キャップわずか4の昌子源(鹿島)が再びセンターバックに入ると見られること。
昨年12月のFIFAクラブワールドカップではレアル・マドリーに闘志あふれる守備を見せ、今季はAFCチャンピオンズリーグでブリスベン・ロアーと対峙するなど着実に国際経験を積み重ねているものの、これほどまでに重圧のかかる大一番は人生初めてだ。
本人は「いつも以上にプレッシャーはあると思うけど、それに押しつぶされるようでは選手としてダメ。プレッシャーを楽しみに変えていけるだけのメンタルは持っていたい」と努めて前向きに話したが、イラク戦直前のシリア戦(東京)で相手マークを外して失点を招くという致命的なミスを犯している。
イラク戦でも吉田と川島永嗣(メス)が連係ミスをする前に、昌子と遠藤航(浦和)がペナルティエリアに侵入してきた相手に体を寄せ切ることができなかった。こうした二の舞を避けるべく、彼は平常心を保つことを第一に考えていくべきだ。
自然体でさえいられれば、常勝軍団の最終ラインを統率者らしい安定したパフォーマンスは見せられるはず。「ユリッチは(コンフェデの)カメルーン戦を見ても荒いというか、メッチャ怒って、セットプレーでも押したり、引っ張ったりしたり、マークがつかんだ手をパーンって払ったりとか、(以前、鹿島で対戦した)ウエスタンシドニーの時と一緒だなと思いました」と昌子は相手FWの欠点を的確に見抜いている様子。
それを駆け引きで露呈させ、退場に追い込むような頭脳プレーができれば、彼自身ももう一段階飛躍する。長友も「彼が自信を持てるようにどんどん声を出していきたい」と年長者らしい発言をしていたが、吉田や川島、ボランチに陣取るであろう長谷部誠(フランクフルト)らにも力強い後押しを求めたい。
オーストラリアにはリスタートという武器もあるだけに、そこにはより警戒を払うべきだ。臨機応変に相手の出方を見つつ、スムーズな対応ができれば、簡単にやれることはないはずだ。「勝利の神様は細部に宿る」とはかつての日本代表指揮官・岡田武史監督(FC今治代表)の名言だが、それを守備陣だけでなく、チーム全員ができるか否か。勝ち点3がほしいのなら、細部にとことんまでこだわった完璧なゲームをするしかない。
(取材・文:元川悦子)
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