若手は「もっとガツガツとやってくれれば」
実は6月シリーズで招集されたときも、メディアから心配する声があがっていた。インテル・ミラノとの契約を2019年6月まで延長しているものの、オフには幾度となく放出候補として報じられた。
3度も監督が交代した2016‐17シーズンは、わずか16試合の出場に終わった。新たに就任したルチアーノ・スパレッティ監督の構想から外れているのでは、という危惧を長友は笑顔で受け止めた。
「何か皆さんがすごく心配してくださっているんですけど、僕がまったく自分のことを心配していないというか。本当にシンプルなことだし、何度も言ってきましたけど、クラブに必要とされないのであれば荷物をまとめて出ていく。自分が必要とされる場所で、輝くための努力をするだけなので」
もちろん、自身を育ててくれたインテル・ミラノを愛してやまない。一方でプロフェッショナルとしての矜持を忘れることなく、求められた場所で常に100%のパフォーマンスを発揮していく。
弱肉強食が絶対的な掟として掲げられる世界である以上は、いつかはポジションを若手に奪われる日が訪れる。自分もそうして台頭してきたし、いざ挑まれる立場になったときにも素直に譲らない。
世代交代を成就させたい若手のギラギラした渇望と、そう簡単に明け渡してなるものかと抗うベテランの執念。二律背反する思いがぶつかりあったときに化学反応が起こり、チームは成長していく。
同じ図式は日本代表にも当てはまる。岡田ジャパン時代は本田圭佑、岡崎慎司ら、同じ1986年生まれの北京五輪世代による強烈な突き上げが、下馬評が芳しくなかったチームの起爆剤になった。
時は流れて、長友はいま、下の世代から突き上げられる状況を望んでいる。UAE(アラブ首長国連邦)代表に敗れるなど、アジア最終予選で苦戦を強いられていた昨秋に、こんな言葉を残したことがあった。
「ワールドカップに行かなければいけないというプレッシャーを、選手たち一人ひとりが感じているというか。チーム全体の躍動感というか、勢いといったものが落ちているのかな、という思いが正直ある。みんながサッカーを楽しんでいるのか、どうかと言ったらいいのか。
若手にはもっとガツガツと、僕や(本田)圭佑、オカ(岡崎)が代表に入ってきたときみたいにやってくれれば。遠慮なんてしなくていいから、自分が本当に中心になるくらいの思いで、日本代表を引っ張ってやるんだ、というギラギラしたメンタルをもってほしいんです」