「放っておくと祐希はどんどん先にいっちゃうので」
高野は、小林や高木善朗ら東京ヴェルディユース92年組のひとりで、2011年トップに昇格。以降、ギラヴァンツ北九州、FC町田ゼルビア、アスルクラロ沼津、鹿児島ユナイテッドFCと渡り歩き、2016年をもって現役を引退した。
現在は小林のビジネスパートナーとして、マネジメントや企画・プランニングの事業に携わっている。表には出していない社会貢献活動を含め、日本での仕事を取り仕切るのが高野の役目だ。
「引退した直後は就職サイトを見て回り、一般企業への就職を考えました。祐希から一緒にやろうと声をかけてもらったのは、昨年の年末。同期のみんなで集まったときです」
東京Vでは、毎年暮れの時期に、アカデミーの選手や保護者が一堂に会するファミリーサッカー大会が開かれる。結束の強い92年組は特に集まりがいい。プロの道に進んだメンバーでは、高野が最初の引退選手となった。
「お疲れさま会のようなものを開いてもらい、そのときに祐希から話を。僕はサッカーしかしてこなかった人間ですから、自分に何ができるのだろうと迷いましたね。迷いましたけど、一緒に新しいことに挑戦したい気持ちが上回った」
容易ならざる道だ。セカンドキャリアへと歩み出すときはただでさえ乗り越えなければならないものが多々あるのに、レールの敷かれていない未踏の地を開拓することになる。
「僕の場合は、何をやるにしても不安は感じないタイプ。どうせ失敗はします。どの職種だろうと仕事は大変で、時にはつらい思いをすることになるでしょう。それを受け入れる覚悟はあるので、ひとつずつ経験し、勉強していきたい。
幸い、周りに助けてくださる方がいて、さまざまなケースの対応の仕方を教えていただけるんです。僕は社会人としてあまりにも知らないことが多すぎるから、なんでも聞けます」
問題は、恐いもの知らずで突き進む小林との相互関係の構築か。一方が大排気量のエンジンなら、もう一方は操縦系統の担当が望ましい。
「そこなんですよ。放っておくと祐希はどんどん先にいっちゃうので、僕がブレーキを踏むべきときは踏まないと」