プレミアリーグをよく知る〈極上の人材〉
ルカクの存在感は際立っている。強靭、かつ柔軟なフィジカルを利したポストワークによって、アバウトなパスでも確実にマイボールにする。相手センターバックの枚数にかかわらず、だ。このキープ力があるからこそ、ユナイテッドの攻撃は数年にない破壊力が感じられるのだろう。ルカクにボールが渡った瞬間、2~3列目のサポートは分厚く、素早い。
また、ポグバ、ムヒタリアン、ファン・マヌエル・マタといったアシスト役にも恵まれているため、ユナイテッド特有のプレッシャーに耐えさえすれば、昨シーズンの25点を上まわるゴール数も期待できそうだ。ルート・ファン・ニステルローイ以来、待望久しい9番タイプがやって来た。
マティッチの加入で、ユナイテッドの守備は格段にレベルアップした。迅速に、いとも簡単に高めのポジションでボールを回収できるため、ショートカウンターの機会も昨シーズンに比べると増えている。
もちろん、マティッチの動きに呼応したDFラインもポジション設定が高くなるため、全体のラインもコンパクトになった。早めの勝負を得意とする両センターバック(エリック・バイリー、フィル・ジョーンズ)との連係もスムーズだ。
マイケル・キャリックのパスセンス、理に適ったポジショニングも捨てがたく、必ず彼を必要とするときがやって来る。しかし、テンポが日々スピードアップする近代フットボール事情を考慮すると、36歳の大ベテランは重要なポイントで起用すべきだ。
フィジカルでキャリックを上まわり、年齢で7歳下まわるマティッチが守備的MFの一角に収まった人選は、至極当然である。ロイ・キーン(アイルランド代表コーチ)が退団して以来、ユナイテッドが探し求めた中盤の1ピースが、マティッチの入団によってようやく埋まった。
ネイマール(パリ・サンジェルマン)のような知名度はないものの、ユナイテッドは実戦タイプの2選手を獲得して好スタートを切った。勝利至上主義のモウリーニョ監督にとって、プレミアリーグをよく知るルカクとマティッチは〈極上の人材〉といって差し支えない。
(文:粕谷秀樹)
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