革命の集大成を見せるか。本気の“カンガルー”が”サムライ”を襲う
その若きディフェンスリーダーが、同い年のベイリー・ライト、二つ年下になる23歳のミロシュ・デゲネクとで組む3バックは、まだ新しいフォーメーションになって日が浅いために、ともするとサッカルーズの弱点として指摘されてしまいがちだ。実際、このシステムになってから5試合を戦ったサッカルーズは、いまだに完封試合、いわゆるクリーンシートがない。
しかし、その3バックも試合を追うごとにコンビネーションが磨かれてきており、先のコンフェデレーションズ杯では世界の名だたる強豪相手に3試合4失点とディフェンスラインが破綻することなく乗り切った。
そのDF陣の今回の日豪戦に向けてのモチベーションは、「日豪戦という大舞台でのクリーンシート達成」ということになる。もし、それが達成されれば豪州には負けがないということ。
日本にとってはまったく考えたくないシナリオだが、若きリーダーのセインスベリーに率いられる守備陣は激しいディフェンスでそのタスクを果たすべくぶつかってくる。日本にとっては何とも厄介な話だ。
アンジ・ポスタコグルー監督は、自らの任期を2018年大会までと公言している。ということは、もし、この最終予選で敗れるようなことがあれば、そこで「ポスタコグルー革命」とも称される豪州サッカーの進化は終わりを迎える。
その過程で辛苦を共にして、今や監督に心酔する現代表選手たちにしてみれば、少しでも長くポスタコグルー体制を維持したい。そして、日本という最大のライバルとの決戦の場で、今までと違うサッカルーズを披露したい。そんな考えで臨んでくる相手はいつものサッカルーズに輪をかけて厄介な相手だ。
サッカルーズがサムライブルーに牙をむくとき、そのピッチで輝きを放つ選手たちの中には、ここに挙げた5人の姿が間違いなくある。この5人を中心に据えて、サッカルーズの面々は「ポスタコグルー革命」の、そのエッセンスを埼玉の地で具現化しにくる。
引き分けなら解任など、どうでもいい。勝つと信じてぶつかるしかない。それができないならば、荒ぶるボクシング・カンガルーからの容赦のない一撃を喰らうことになりかねないぞ、日本。
(取材・文:植松久隆)
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