プレミアというハイレベルな競争世界の厳しさ
スウォンジーとの開幕戦(0-0)でも引き分けたチームには決定力不足の問題が指摘されている。同時に、昨季半ばまでの正CBが不在でも守備が問題視されずにいる事実からは、やはり吉田を認めている周囲の評価が窺える。
主将でもあったジョゼ・フォンテが今年1月にウェストハムへと去り、守備とチームの要として後を継いだビルヒル・ファン・ダイクが、昨季後半の怪我と今夏の移籍志願で戦力外の状態でも、若いジャック・スティーブンスを相棒にリーダーシップを発揮し始めた吉田が最終ラインを安定させているのだ。
今季リーグカップ第2ラウンドでのウルブズ戦(0-2)でもそうだったように、キャプテンマークをつけることさえある。昨季末に感想を訊くと、本人は「年功序列というか、自分が長くいるから」と謙遜していたが、古株への敬意はチーム外でも抱かれる。契約の延長は潜在能力ではなく実力発揮があればこそ。
1度目の契約期間中に放出される外国人選手も珍しくないプレミアでは、メディアもファンも新契約を手にする難しさを認識している。2年前にプレミアの日本人として初の契約延長に成功した吉田は、今夏に2度目の新契約をとりつけたサウサンプトンの主軸なのだ。
だからといって、地位が安泰などというわけではない。チームは吉田との新契約締結と前後して、ウェスレイ・フートという即戦力をCB陣に加えている。ラツィオから獲得した23歳は、同い年のスティーブンスと吉田の相棒役を競う線が濃厚だが、クラブが放出を拒み続ける(執筆時点)ファン・ダイクの新パートナーという見方も一部にはある。
プレミアというハイレベルな競争世界の厳しさは岡崎も同様。レスターがマンチェスター・ユナイテッドに敗れた3節(0-2)では、交代した60分までの全力投球は相変わらずで、国内紙の評価も及第点の6点ではあっても、零封負けしたチームのFWとして「機能不十分」だとメディアで評された。
リーグ再開となる9月9日の第4節から、プレミアでレギュラーを張る日本代表戦士2名の予断を許さない闘いも再び始まる。
(取材・文:山中忍【イングランド】)
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