選手同士のぶつかり合いが多かった最終予選
バーレーン入り直後、ジーコは小野をボランチに入れ、2列目に中村と中田、FWに柳沢を入れる秘策をテストしたが、小野がいきなり負傷。中田をボランチに下げ、小笠原を2列目に入れざるを得なくなった。
この混乱も、アブダビの夜に生まれた結束があったら乗り越えることができた。バーレーンとの大一番で値千金の決勝弾をたたき出したのも突如チャンスが巡ってきた小笠原。そんな偶然の巡り合わせも日本を力強く後押しした。
この5日後の最終戦・北朝鮮戦は、北朝鮮で起きた暴動のため、中立地・バンコクでの開催となり、しかも無観客試合だった。無観客試合と言っても、関係者が多数スタンドに陣取っていて、どこか緊張感のない状況下での試合だった。仮に平壌開催だったら、こんな空気ではなかっただろう。
このAFCの決定もチームを後押しし、日本は柳沢と大黒のゴールで2-0と快勝。終わってみれば、勝ち点15で同13のイランを上回って1位通過を果たした。
「ジーコジャパンは本当に個性の強い選手の集団だった」と後に加地が漏らしたことがあったが、選手と監督、あるいは選手同士のぶつかり合いがこれほど多かった最終予選も珍しい。
逆に言えば、今はそれだけの発言力のある選手が少ないということだ。川島永嗣(メス)や長谷部誠(フランクフルト)らベテランの統率力も重要だが、彼らやハリルホジッチ監督に物申せる若手が出てきてこそ、日本はもう一段階強くなれる。小林祐希(ヘーレンフェーン)のようなキャラクターは貴重だ。彼らの今後に期待を寄せたい。
(取材・文:元川悦子)
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