初戦上々も勝ち点伸びず加茂監督を更迭。未経験の岡田武史コーチを昇格させる博打に
不安の募る船出となった日本だったが、初戦・ウズベキスタン戦はカズ(三浦知良=横浜FC)の4ゴールなどで6-3の勝利。守りの乱れこそ懸念されたものの、白星発進に加茂監督らスタッフも胸をなでおろした。
続く9月19日のアウェイ・UAE戦(アブダビ)は「試合中に頭がボーっとして、逆に寒気がするほどの暑さだった」と名波浩(磐田監督)が述懐するほどの酷暑でのゲーム。それをスコアレスドローで乗り切ったのは日本にとって御の字で、ここまでは悪くない序盤だったと見られた。
歯車が狂い始めたのは、9月28日の第3戦・韓国戦(東京・国立)。汗ばむような陽気の中、14時にキックオフされたこの試合は手堅い戦いで前半を0-0で折り返し、後半22分に山口素弘(解説者)の芸術的ループシュートが決まったところまではシナリオ通りだった。
が、韓国がFWの切り札・金大義を投入した直後、加茂監督は日本国籍を取得してこの試合で代表デビューした呂比須ワグナー(新潟監督)を下げて秋田豊(現在は解説者)を投入。この守備的采配で日本の勢いが止まり、守りを混乱させる結果となった。
そして徐正源(水原三星監督)と李敏成にゴールを奪われ、逆転負け。この敗戦を境に中田英寿と名波が報道陣に対して口を閉ざすようになるなど、チームにこれまでにない緊張感が漂った。
1週間後の10月4日のアウェイ・カザフスタン戦(アルマトイ)で秋田の先制点でリードしながらラスト1分のところで追いつかれ、1-1のドローに終わったことで、日本サッカー協会幹部は監督交代を決断。岡田武史コーチを昇格させた。Jリーグはおろか、実業団でも指揮を執ったことのない指導者を抜擢するのは常軌を逸している。それでも日本は新たな一歩を踏み出すしかないほど追い込まれていた。
岡田体制初陣となった10月11日のアウェイ・ウズベキスタン戦(タシケント)は中田や呂比須らここまでの主力を外し、森島寛晃(C大阪統括部長)と城彰二(解説者)を先発起用。
彼らが攻撃陣を活性化させたがゴールが遠く、後半31分に失点してしまう苦境に陥った。しかし残り1分、後半から出場していた呂比須がロングボールをヘッド。これがDFのミスを誘って幸運な同点弾が生まれる。この1点がなければ、日本は敗退していた可能性もあった。