責任を背負った行動と言動。チームに与える影響力
丸橋が蹴った右コーナーキック。植田のマークを巧みに外してニアサイドにポジションを移した杉本が、高い打点から見舞った強烈なヘディング弾は、またもや曽ヶ端のスーパーセーブにあった。
地上戦でも、50メートル走で6秒を切る韋駄天ぶりでカウンターの一翼を担った。後半37分には右サイドを抜け出したFWリカルド・サントスをフォロー。折り返しに右足を合わせたが、今度は曽ヶ端の正面へ飛んでしまった。
このとき、必死に追走した末に、最後はスライディングでシュートブロックに飛び込んで少なからずプレッシャーを与えた昌子は、試合後に偽らざる思いを漏らしてもいる。
「90分間を通してカウンターばかりだったというか。僕とナオとでしか守っていない気がしてしんどかった。マジでしんどかった。今日に関しては、5失点くらいしていてもおかしくなかった」
テクニックと身体能力の高さだけではない。昨シーズンはチーム統括部長と監督を兼任し、今シーズンからは前者に専念している大熊清氏は、杉本の「心」の急成長にも目を細める。
「言動や立ち居振る舞いを介して、チームにも影響力を与えるようになってきた。責任をもって、周囲に自分の考えを発するようになりましたよね」
アントラーズ戦後に自分を責める言葉を残している杉本だが、実は続きがある。
「前が決められへんかったから(負けた)、と言えばそれで終わってしまうこと。難しいけど、それだけじゃない。もちろん前が決めないといけないけど、すべて前が悪いとは僕には思えない。誰が悪いということではないけど、後ろも最後まで耐える力というものを、このチームはつけていかないといけない」
主導権を握っていた時間帯から、アントラーズには一発のカウンターがあるとお互いに言い合ってきた。それでも決勝点の場面では、縦への速い攻撃に横への揺さぶりも加えられて完全に崩された。
左から右へサイドを変えられ、右タッチライン際に開いたFW金崎夢生に縦パスを通された。チーム全体の意識が金崎のいるサイドに傾き、ファーサイドにいたレアンドロをフリーにしてしまった。
聞きようによっては、守備陣が不快な思いをするかもしれない。余計な軋轢を生じさせるかもしれない。それでも、鉄は熱いうちに打て、とばかりに歯に衣着せぬ言葉で露呈した問題点を伝える。
チーム全体がもっと成長するためにも、なあなあでは済ませたくない――とも映る姿勢は、ジュニアユースから育てられてきた、愛着深いセレッソに注がれる熱い思いと表裏一体でもある。