究極の多機能プレーヤー誕生?
小林祐希は、ヘーレンフェーンで主に“8番”というポジションを任され、プレーの幅を大きく広げている。3人のMFのうち、“10番”は攻撃的MF、“6番”がアンカー、ボランチとするならば、“8番”は“コネクティング・ミッドフィルダー”とオランダで呼ばれているポジションだ。攻撃も守備も全てやる――それが“8番”の醍醐味である。
ただし、小林に対するチームからのオーダーは「あまり上がらないでくれ」というもの。だから、“8番”と言っても、本人はかなりボランチ寄りの意識でプレーしている。
オランダで2シーズン目を迎える小林は、自身のタスクについて「俺の仕事の第一は今、ヘーレンフェーンにいる選手たちの能力を引き出して、チームがどれだけ勝てるかということ」と理解している。ただし、得意としていたポジションは“10番”なので、その能力を今年はもっと活かしたいという強い意思もある。
「昨季は(ボランチとして)味方のために、チームのために――ということで自分を抑える方がすごく多かった。今年はそのバランスを時に崩していくのがテーマ。チャンスがあればゴールを狙っていく」
1つの試合の中で、守り、つなぎ、チャンスを作り、ゴールに絡む、そんな究極の多機能プレーヤーがオランダで生まれつつあるのかもしれない。私は頭の中でボランチ50%、つなぎ25%、ゴール前でのアクションが25%という数字を弾き、小林に意見を聞いてみた。
「いや、俺がより“マルチ(多機能)”でやるんだったら、まずパーセンテージで分けちゃダメだと思う。全部でボランチだから」
なるほど正論だ。それでも、日本代表に必要とされる選手になるために克服すべき課題を抽出すると、激しい守備に“50%”という数字が本人の口から出てくる。
「パーセンテージで分けるとしたら、W杯まで見据えると“イエローカード覚悟のディフェンス”が5割以上を占めるかもしれない。すごく極端な言い方だけど、今季は出場停止が1回、2回あってもいいかなという風にしていきたい。
激しくファイトしてとか、相手のカウンターを阻止してとか、チームが助かるイエローカードだったら何枚かもらってもいいかなと思う。それで『激しい選手』と思われるんだったら、(出場停止で)1試合捨てても、俺の評価が上がる。そのことを、最近のハリルホジッチ監督の伝言ですごく感じる」