“10番”で花開くチャナティップのポテンシャル
札幌は前半、3-4-2-1の布陣で臨み、都倉賢とチャナティップが2列目に入っていた。だが流れは悪く、前線が有機的に絡んでチャンスを作る場面はほとんどなし。後半に入ってジェイと都倉の2トップに切り替え、チャナティップがトップ下に入ってから徐々に流れが変わる。
3バック気味にビルドアップする川崎Fの最終ラインに対し、より高い位置からプレッシャーをかけられるようになり、札幌はチーム全体を前に押し出してカウンターという強みを発揮しやすくなっていった。
そこでチャナティップが可能性を感じさせるプレーを連発した。札幌の左ウィングバックを務めた石川直樹は「彼が前向きにボールを運べている時は、勢いがすごく出ている時」と、背番号18がチームの出来を左右するバロメーター的な意味合いを持つと話す。
「チャナをただ1人でドリブルさせないで、周りでサポートしてあげられるだけでも違ってくると思う。後半は特に真ん中付近ですごくボールを持てていたので、そういった部分をもっと生かしてあげたい」
この指摘は非常に重要だろう。チャナティップは多彩なドリブルやパスのパターンを持っている選手。ドリブルだけでも、相手の守備網を割っていくドリブル、ボールを運ぶドリブル、ボールをキープするドリブル、パスコースを作るためのドリブル…非常に多くの形がある。
視野の広さや独特のテンポ、パスやドリブルの技術の高さをチーム戦術の中で100%活かしきるには、周囲の理解が不可欠なだけでなく、ピッチ上で選手の距離を今よりも近くして、互いに連動しながらプレーの最適解を見つけていくことが必要になる。札幌は守備的に戦う展開が多くなることもあって、チャナティップと周囲の選手との距離はまだ遠い。