黒子役をこなしつつ、増えてきたアシスト
リーグ前半の17試合を終えた時点では、自身のパフォーマンスについて「アシストも得点も少ないけど」としていたが、手応えも得ているようだった。
「それ以外にやらなきゃいけないことがたくさんあったし、できた。そっちの方がうまく回るから。黒子役というか、そういうのでうまくいっているのは大きい。後半戦はそれをやりつつゴール前で決定的な仕事をしたり……でも、前に行きすぎて渋滞しないようにというのはあるからね。
そういう微妙なポジション取りだったり、ゲームの流れを読んでやるという意味で一番良かったのは鹿島(アントラーズ)戦の1点目と、FC東京戦で(川辺)駿からアダ(アダイウトン)が決めたゴール。あれがやっぱり流動的にできているし、相手が隙を見せた時に『今だ!』というのではなくて、何気なくできているところがいいかな」
磐田での中村俊輔は、得点の数手前に関与していることが多い。ゴールに直結するプレーを見せたいという思いもあるが、チームをコントロールすることに主眼を置く。それによって周囲の動きも円滑になっている。
そんな中で、後半戦は自身のアシストが増えてきた。C大阪戦のショートコーナーを含めてセットプレーによるもので、「止まっているボールだから」と本人は事も無げに言う。だが、それをさらりと口にできてしまうほどのキックとビジョンの持ち主は少ない。名波監督の言葉を借りれば「世界でも有数」だ。
特別な力を持つ天才レフティーは、主役であり黒子だ。どちらの役割を演じたとしても、チームに対して常にポジティブな影響を与えることができる。
中村俊輔は、仲間たちと共にまい進する。その歩みは止まりそうにない。
(取材・文:青木務)
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