「伝統」変わらず。しかし、より「自由」に
何より監督がトーマス・トゥヘルからペーター・ボスに交代したばかり。しかし新任者の採用する基本布陣は、ウイングを配置する[4-3-3]だ。見た目は前任者のそれと変わらない。具体的に「やり方」はどう変わったのか。香川によれば「切り替えの早さ」を重視することに変わりはないのだという。
「攻守においては本当に、ゲーゲンプレッシング、取った後のラインの押し上げ、取られた後の前からの守備、そこはさらに徹底して言われています。去年の課題でもあったカウンターに対するディフェンスの仕方であったり、ゲーゲンプレッシングという意味では、もちろんまだまだ完成度的には低いですけど、そうした自分たちのやるサッカーというのは、このチームに合っているスタイルだと思うので、それをもう一度取り戻せたら、さらに攻守において安定すると思います」
キーワードは引き続き「ゲーゲンプレッシング」だ。ユルゲン・クロップ政権時から息づくドルトムントのDNA。狭義にはボールを失った直後の反射的なプレスを意味するが、広義にはボールを「取った後」の素早いアクションも含む「切り替えの早さ」それ自体と捉えて差し支えないだろう。ボス新監督もこうした“BVBの伝統”を継承していくようだ。
それでは“違い”はどこに現れるのか。
「逆に攻撃に関しては割と自由に、ポジショニングも含めて、やれているんじゃないかなあ、と。トゥヘルの時はこうやったらこうやれ、っていうのがたくさんあった中で、そこの縛りはあまり強制的ではないというか、そこまで要求されることはないので」
香川によれば、ボールを奪った後の攻撃に関して、前任者に比べると、戦術の自由度が高いようである。
「今日(アーレン戦)もやっていた中ですごく流動的にやれているので、それがまたプラスアルファ、上積みされれば、もっともっとチームは良くなっていくと思うし、個の力で去年はやっていた部分をさらにチームとして流動的にやれれば、そこを融合できればいいと思います。あとはバランスじゃないですか」
最終的には5バックを後方に据え、オーバメヤン、ロイス、デンベレら「個の力」を活かしたカウンター型で任期を終えたトーマス・トゥヘル前監督。香川は「トゥヘルの時には、トゥヘルの良さがあった」と前置きしつつ、もう1度「ゲーゲンプレッシング」を軸に守備組織を整え、切り替えの早さを徹底し、そこへボス新監督に与えられた“自由”を「融合」させていくことが重要と考えているようだ。
それは、もちろん香川自身をチームに溶け込ませていくことも意味する。
「2列目から、3列目からの飛び出しであったり、抜けていくスタイルは、こういうサッカーに有効的ですし、中盤の選手がもっとそういうところに入っていけるように、それは自分の良さでもあるので、今シーズンはさらに自分の良さを、さらにこのチームに植え付けて行けたらいいなと思っています」
トゥヘル時代は主に8番として起用された香川。今季は“自由”を有効活用して、クロップ時代のセカンドトップとしての良さも、取り戻していくということなのだろうか。