「僕らの年代はいい選手が多くて、チームにもまだまだ必要」
年々、選手寿命が延びているサッカー界だが、松井はブルガリアやポーランドにいた数年前より今の方がはるかにコンディションがいいという。
「日本に帰ってもう1回、体を作れたかな。前に欧州にいた時は痛いところだらけだったから(苦笑)。磐田で毎日すごく厳しい練習をしたし、練習量も欧州とは違ったんで、フィジカルを鍛え直せたのは自分にとってはプラスですね。いろんな人にアドバイスをもらったりしたんで、今後もやっていけるかなと思います」と本人も自信をのぞかせる。
同じ81年組の盟友・鈴木啓太(元浦和、現AuB株式会社社長)が2015年シーズン限りでキャリアに区切りをつけ、高松大樹(前大分、現大分市会議員)が2016年、石川直宏(FC東京)が2017年を最後にユニフォームを脱ぐなど、新たな道に踏み出す同世代も日に日に増えている。そういう中、現役にこだわる松井は体が動く限り、ピッチに立ち続ける構えだ。
「ナオみたいにケガでできなくなって引退を決断したり、他のアテネ組が試合に出れなかったりと、いろんな選手がいる中で、自分はまだサッカーできてることがホントにありがたい。やれなくなった人のためにも僕は前に進むことが大事だなと思います。
コマ(駒野友一=福岡)からも電話ありましたよ。『退団セレモニーで泣いてたね』って言われたけど、『泣いてねえ』って(苦笑)。コマは今、J2アシストランキング1位でしょ。もともとポテンシャルは持ってるわけだから、中にいい選手が入れば点につながるから。
36になっても走れてるし、ホント変わんない。僕らの年代はいい選手が多くて、チームにもまだまだ必要。長くできるんならやった方がいいし、チームのために、日本サッカー界のために、みんな頑張ってほしいですね」
ポーランド2部でどのような足跡を残せるかはまだ未知数だが、松井には他の誰にもない経験値がある。欧州の中でもロシア、ブルガリア、ポーランドといった発展途上の国々を渡り歩いたタフさや逞しさは特筆すべきもの。
それを日本サッカー界全体に伝えていくためにも、彼自身が輝き続けることが肝要だ。南アで残した強烈なインパクトをもう一度、欧州の地で示してもらいたいものだ。
(取材・文:元川悦子)
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