気迫のこもったプレーの数々。勝利への貪欲な姿勢
試合前は充実した表情で入場した猶本光。ピッチ上でも気迫のこもったプレーを見せる【写真:舩木渉】
猶本光は、テレビカメラの前で人目もはばからず大粒の涙を流した。
12日に行われたなでしこリーグカップ1部の決勝戦、浦和レッズレディースは試合終了間際にゴールを奪われ、劇的な形でジェフユナイテッド市原・千葉レディースに0-1で敗戦。2014年のリーグ優勝以来、3年ぶりのタイトル獲得のチャンスを逃した。
準決勝で昨季リーグ戦とカップ戦の二冠を達成した日テレ・ベレーザに勝利して迎えた決勝、猶本のプレーからは自分が中心になってチームにタイトルをもたらす、という並々ならぬ意気込みが感じられた。
ピッチ脇で写真を撮りながらでも、プレーに込められた気迫が伝わってきた。ボランチにもかかわらず、奪われたボールを敵陣深くまで追って体を投げ出す。プレーが切れれば手を叩いて味方を鼓舞する。誰よりも戦う姿勢を前面に押し出していた。
走って、体を張って、声で鼓舞し…猶本光は浦和レッズレディースの中心だった【写真:舩木渉】
後半になると、明らかにポジション取りが変わった。前半はダブルボランチ気味の低い位置からゲームを組み立てていたが、後半開始から筏井りさを後ろに残し、猶本はより高いFWに近い位置で攻撃的に振る舞うようになる。
「自分自身、前半は低いポジションをとっていたので、少し前めのポジションをとって、相手のセンターバックを前にできるように。もうちょっと2トップのマークをゆるくできたらいいなと思って、後半は少しポジションを変えました」
前半はジェフLに押し込まれる時間もあり、思うようなゲーム運びができなかった。本来ボール支配率を高めて主導権を握ろうとする浦和Lの攻撃は、この試合に限れば前線の菅澤優衣香と安藤梢を走らせるカウンターや、右サイドバックの栗島朱里が機を見て上げるアーリークロスなど限られたパターンしかなく、苦しかった。
その状況をなんとか打開しようとする猶本の判断が、ポジションの変更だった。彼女自身「全然ダメだった」と一言で言い切ったが、戦う姿勢も含め、過去にこれほどの力強いプレーは記憶にない。リーグ優勝を成し遂げ、年間ベストイレブンにも選ばれた2014年頃の充実していた時期を超えるパフォーマンスに思えた。