「大きな傷痕が開いて、永遠にふさがらない」
あの悲惨な事故から9ヶ月が経ち、シャペコエンセは60試合近くをこなしてきた。サンタ・カタリーナ州選手権に始まり、コパ・リベルタドーレス、全国選手権1部、コパ・スダメリカーナなど数多くの大会に参加し、一見すると再建が順調に進んでいるように思える。
それでもピッチ内の落ち着きを取り戻したことと、ピッチ外でクラブのこれまでの積み重ねを取り戻すことは違うとグローリは感じている。
「確かに事故以前は素晴らしい雰囲気だったけど、それはもう二度と戻ってこない。大きな傷痕が開いて、永遠にふさがらない、完治しないと思う。特に最初の数週間はみんな悲しみに暮れていて、とてもよくなかった。ただ時間とともにだんだん慣れてきて、徐々にいい雰囲気になってはいる。でも、かつてあったような雰囲気には二度と戻らないんだ」
スルガ銀行チャンピオンシップは、天国へ旅立った仲間たちが遺した重要なタイトルマッチだった。ベンチスタートとなった本来の主将ウェリントン・パウリスタに代わってシャペコエンセのキャプテンマークを巻いて入場するグローリの顔は引き締まっていた。胸に抱えたコパ・スダメリカーナのトロフィーは、実際よりも重く感じたはずだ。彼はレンタル中の身で、来季どこでプレーすることになるかはわからないが、誰よりも試合の重要性が身にしみていただろう。
1973年の創設以来、積み重ねられてきたシャペコエンセのスピリットはグローリのような選手たちによって、脈々と受け継がれていく。取り戻せないものが多くあったとしても、クラブをただ再建するのではなく、あの事故をスタート地点として、シャペコのスピリットとともに新たな文化を作り上げていこうとしている。
(取材・文:舩木渉)
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