川島が描くロシアの“先”。「1日1日悔いなく生きたい」
W杯最終予選に入ってから代表の若返りは急激に進んでいるが、原口や久保、昌子らは次の2連戦で過去に体験したことのない壮絶な重圧を感じることだろう。仮にそこで勝てなければ、プレーオフという未知なる戦いに挑まなければならなくなる。そんな時こそ、ベテラン・川島にはチーム全体をけん引する重責が課せられる。2008年の初キャップから足掛け10年も日の丸を背負い続けた経験値を今こそ生かすしかないのだ。
「次の2試合のプレッシャーは大きいし、若い選手たちも今まで以上に重いものを背負ってプレーしなきゃいけない。グループ3位でプレーオフという可能性もありますよね。そうならないのが一番いいけど、シナリオはまだ何も決まっていない。すべてを乗り越えていかないとW杯はないんです。
自分も『どうすれば修羅場をくぐり抜けられるか』と考えることはありますし、『プレッシャーの中で勝ち取ってきたものがあるから大丈夫』と言い聞かせたりもしますけど、結局は修羅場をくぐるためのコツなんかない。一瞬一瞬、ワンプレーワンプレーを乗り越えてやることしかないんだと今は思います。
南アフリカの時を振り返ってもそうだけど、むしろ若い時の方が何も考えずにプレーしていたのかなという気がします。1つひとつに集中していたし、練習の時の感覚をそのままゲームで出せたから。いい意味で考えずにプレーできたらいいですよね」と彼はしみじみ語る。
いずれにせよ、目の前の関門を突破することでロシアという大舞台が見えてくる。今の日本代表には、本田のようにロシアW杯をキャリアの集大成と位置づける選手もいるが、川島の場合は「自分で終わりを決めるつもりはない」と言う。
「能活さん(川口=相模原)も、ナラさん(楢崎=名古屋)も4回W杯に出ているし、ブッフォン(ユベントス)も40歳になるのにまだ代表でやっている。自分としても『あと2回(W杯で)やれたらいいな』って考えたりはします。でも、代表というのは、どんなに自分が努力しても必要とされる時もあれば、そうじゃない時もある。年齢やタイミング的に今回が最後になるかもしれない。でも自分には『今回が最後になるかもしれないから悔いなくやろう』という気持ちはない。W杯だろうが何だろうが、1日1日悔いなく生きたいという思いは変わらない。とにかく今は全力でやることだけを心がけています」
全身全霊を注いだ先にロシアW杯という道が開けることを信じて、川島永嗣は日本のゴールマウスをしっかりと守り続ける。
(取材・文:元川悦子)
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