「そろそろある」と予想するチャンス。今こそ自らの価値を示す時
欧州で当たり前だったプレー強度の高さと日本の主審の基準が合わない場面もある。13日行われたJ1第22節FC東京戦の70分、途中出場だったハーフナーは味方がヘディングで競った後のこぼれ球に反応し、DFを腕で抑えながら反転してループシュートでゴールネットを揺らした。
しかし、東城穣主審の判定はハーフナーのファウル。これ以外でも厳しめのジャッジに天を仰ぐ場面が何度かあった。「得点でしょ、あれ」とループシュートの場面を振り返ったハーフナーは「本当はJリーグが(ヨーロッパの基準に)寄せなきゃいけないと思うんですけどね。まあしょうがないです。それにも慣れるしかない」と前を向いた。
Jリーグに復帰してからまだゴールに恵まれていないが、FC東京戦でその時は近づいていると確信できた。GKのスーパーセーブに阻まれたものの、86分にはMF橋本和のクロスから武器でもあるヘディンシュートでゴールを強襲。劣勢の中、45分間のプレーでゴールになってもおかしくない場面を2度作った。
おそらくハーフナー自身もゴールに近づいていることを感じている。FC東京戦後には「そろそろ点が欲しい」と野心を隠さず、「(スタメン出場は)そろそろあると思います」と述べてニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
神戸への入団会見で「得点が自分の生きる道」と語っていた30歳のストライカーは、欧州で絶対的な武器を磨き上げ、円熟味を増して日本に帰ってきた。彼は昨年2月に極寒のオランダで「これからの試合も結果を残していければ、選ばれるはず」と話した1ヶ月後、日本代表復帰を果たした有言実行の男だ。
会話をしていても、いい意味でのギラギラ感は失われていない。いつも飄々としているが、胸の内に野心と闘志、自信を秘めている。ポドルスキに期待が集まるのはもちろんだが、11位に沈み不振にあえぐ神戸を救うのはクリムゾンレッドの背番号9をまとったハーフナーかもしれない。
(取材・文:舩木渉)
【了】