「12月の最後には一番上にいたい」
だからこそ、ゴールという目に見える結果を早く出させてあげたいと誰もが思っていた。家長と同じくなかなか出場機会を得られなかった中で、2戦連続先発フル出場で連勝に貢献したDF奈良竜樹が言う。
「僕は基本的に、味方がゴールしてもあまり祝福にいかないんですけど。でも、みんながアキさんのゴールを待っていたし、僕も嬉しかったので、遅れ気味でしたけど今日はいっちゃいました。アキさんはゴール以外のプレーもすさまじかった。あれだけ前で体を張ってくれたら、後ろは軽いプレーはできません」
試合前の時点で、首位アントラーズとの勝ち点差は7ポイントだった。勝って4ポイント差にするのと、負けて二桁に広がるのとでは天と地ほどの差がある。まさに大一番で、球際の強さと切り替えの速さで王者を凌駕した。
その一翼を担ったのが、後半アディショナルタイムまでプレーした家長だった。待望の初ゴールを挙げたことでチーム全体の結束と士気も高まり、ポジション争いの激化でお互いを高め合う相乗効果も生む。
8月はリーグ戦だけでなく、浦和レッズとのACL準々決勝やYBCルヴァンカップのノックアウトステージも待つ。まさに総力が問われるだけに、奈良は家長があげた咆哮が単なる一発にとどまらないと笑う。
「この試合に勝つことにおいてもそうでしたけど、これから先を戦っていくうえでも大きいと思う」
直近のリーグ戦では、2試合続けてリザーブに甘んじていた。小林が右太ももの裏に張りを覚えたことで回ってきた、4度目の先発で結果を残した家長は「自分自身のいいきっかけになれば」と続ける。
「やっぱり試合に出たいし、もっと長い時間使ってもほしい。そういうモヤモヤした気持ちはずっともっていたし、あとはチームが勝たなければチャンスも来ないので。その意味で、チームが勝ててよかった。12月の最後には一番上にいたいので、上のチームに離されないように、しっかりとついていきたい」
フロンターレに欠けていた最後のピース、家長が浮かべたはちきれんばかりの笑顔がカクテル光線に映える。どこからでもゴールを奪える攻撃力に、誰が出ても試合を支配できる層の厚さを伴わせながら、進撃の夏をさらに加速させていく。
(取材・文:藤江直人)
【了】