待ちに待った初ゴール。弾けた最高の笑顔
ピッチで何人もの仲間に覆いかぶさられ、手洗い祝福を受け終わると、とびっきりの笑顔が待っていた。川崎フロンターレのベンチからリザーブの選手たちが飛び出し、早くこっちに来いと手招きしている。
誰もが待って、待って、待ち続けた移籍後初ゴール。ホームの等々力陸上競技場のボルテージが最高潮に達する中、MF家長昭博は照れくさそうな表情を浮かべながら輪のなかへ飛び込んでいった。
「やっぱり仲間がいて、自分がいると思うので。仲間が点を決めたときも嬉しいですし、自分が点を決めて周りが喜んでくれるのも本当にありがたいこと。みんなには感謝しています」
ホームに首位・鹿島アントラーズを迎えた13日の明治安田生命J1リーグ第22節。フロンターレの浮沈だけでなく、今シーズンの優勝戦線の行方をも占う大一番の後半27分に、待望の一発が飛び出した。
自陣でMF大島僚太からボールを受けた家長が、得意のドリブルを開始する。10メートル、20メートルと力強く、重心を低くしたまま加速していった先で、右タッチライン際にいたFW小林悠へ預ける。
そのまま前へ走り続け、小林からの絶妙なリターンをペナルティエリアのちょうど右角のあたりで受けた瞬間だった。背番号41の脳裏には、ゴールに至るまでのルートが鮮明に浮かびあがっていた。
「いいボールが返ってきたので、とにかく最後はシュートで終わろうと思って。たまたま入った感じですけど、イメージはしていました」
切り返しから進行方向を左側へ変えて、マークしようと距離を詰めてきた鹿島のMF遠藤康をかわす。相手ゴールとGK曽ヶ端準の位置を視界にとらえ、利き足の左足をいつでも振り抜ける体制を整えた直後だった。
強振ではなくソフトタッチ。ライナーではなく緩やかな、それでいてカーブ回転がかけられた絶妙の軌道が左足のインサイドから放たれる。強いシュートを予測していた分だけ、曽ヶ端の反応も微妙に遅れる。
百戦錬磨の38歳の守護神が、体勢を立て直しながら必死に伸ばした右手をかすめたシュートが、左ポストに当たってからゴールネットを揺らす。悔しさのあまり、曽ヶ端が右手でピッチを叩く。