「ナナさん(名波浩)の存在はとてつもなくデカい」
――ところで、東京ヴェルディユース時代から盟友、高木善朗が「人間がやわらかくなったような。トゲトゲしさみたいなものがなくなりましたね」と話していましたよ。
「人に対する接し方は変えましたね。だいぶやさしくなったと思う」
――稀代のツンツン野郎がどうしたことか。きっかけは?
「ナナさんに会ってからかな。あまり言いたくないんですが、自分にとってあの人の存在はとてつもなくデカいです。そのほか代表入って自覚を持ったり、世界で通用するにはプレーだけでは不充分だとわかったことも。
実際、意識的に接し方を変えてみて、いいことがたくさんあったから。たとえば、オランダで取材を受けるとき、このおれがヘーレンフェーンの駅まで迎えに行き、お茶を出し、満足してもらって最後は駅まで送るんですよ。以前では考えられない」
――そうかな。昔から君はメディアの人間に対しての気遣いはありましたよ。ずいぶんと細かいところまで見ているなと感心したものです。
「もともと性格的には気を遣うほうで、ちゃんと表現できるかの問題。やっと大人になったんじゃないですかね。この年になって」
――一方で、丸くなったと言われるのは気に食わないのでは?
「丸くなりました?」
――僕の印象はあまり変わりませんが、トゲトゲしさがなくなったと丸くなったはほぼ同義語。
「何かあった場合はいつでも打って出る心構えはありますよ。見てのとおり、外見的な面も自分の好きなようにやっています」
――さて、もうすぐエールディビジ17‐18シーズンの開幕です。8月13日、ヘーレンフェーンはフローニンゲンとのダービーマッチ。CSのフジテレビNEXTに加入しなければ。
「向こうには、堂安律がいますね」
――おっと、そうでした。面識は?
「磐田時代、試合では対戦したことがありますが、しゃべったことはない」
――彼はなかなかのタマでしょ?
「堂安のプレースタイルは大好きです。ただ、ガンバ大阪やU‐20日本代表でやっていたようなプレーは難しいでしょうね。まず、ボールが来ない、リターンパスも返ってこない。プレーを制限され、サイドをやるなら内側に入っていけない。おれもそこはだいぶ苦労しましたから、うまく順応できるか」
――日本でも大注目の一戦になります。
「そうは言っても、おそらく堂安は出てくるはず。フローニンゲンはほかにもいい選手がたくさんいるので楽しみです。まあ、見ていてください」
(取材・文:海江田哲朗)
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