「選手たちのほうが意識してやっている感じはしました」(下平監督)
確かに盛り上がった。脚光も浴びた。ドイツ代表で「10番」を背負い、3年前のワールドカップ・ブラジル大会で世界の頂点にも立った男の襲来は、リーグ戦での対戦を控えるチームに警戒感を与えた。
ほとんど存在感を放てない時間帯が続いても、ほんの数秒の隙を与えればゴールに直結するプレーをされる。一瞬たりとも油断はできない。それでも、レイソルを率いる下平隆宏監督は状況を静観していた。
「ポドルスキ選手にマンマークにつくとか、特別なことは僕のほうから働きかけていません。ただ、一発がある選手なので、そういうところでの寄せをいつもより速くしたほうがいいというのを、選手たちのほうが意識してやっている感じはしましたね」
中谷を中心に、先のFIFA・U-20ワールドカップで日本の最終ラインを担った20歳の中山雄太、ハリルジャパンにも招集された22歳の守護神・中村航輔らの若手が目を輝かせ、心を躍らせながらヴィッセル戦への準備を重ねる姿を温かく見守った。
ワールドクラスと呼ばれる選手とただ単にマッチアップするだけでは、もちろん満足できない。ポドルスキを抑え込み、チームも勝利をつかんだ先に、成長できたという手応えが待つ。弾き出された答えが、中山によれば「左足の脅威を防ぐ」ことだった。
「僕自身は直接マッチアップする場面は少なかったですけど、シン君(中谷)はポドルスキ選手がもった瞬間にしっかりと当たっていましたし、ラインコントロールなどの駆け引きで比較的、ポドルスキ選手がやりやすいという状況は制限できたのかなと思います。そこは自信になりました」
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