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ネイマール、移籍金290億円でPSG行きの真相。歴史的大事件にバルサ幹部が感じた憤り【バルセロナ記者の目】

text by トニ・フリエロス photo by Getty Images

正当化は難しく、サッカー界にショックを与える出来事

 ネイマールのさよならには、スポーツ面での個人的な野心の要素も含まれている。PSGは彼の望み通りのチームを作ることを約束した。そこでリーダーとなるのは彼であり、フリーキックやPKを蹴るのも彼だ。すべてが彼を中心に回るのだ。

 バルサではその役割は2021年までの契約更新を果たしたメッシが担っていた。心の奥底には、世界一の選手になりたいという自己中心主義が隠されていたのだが、それはメッシの横にいてはほぼ実現不可能なものであった。

 しかしながら、ネイマールにとってはスポーツ面においてリスクの高い挑戦となる…。もしチャンピオンズリーグを勝ち取ることができなかったら、お分かりの通り。それだけが、彼が銃に込められる唯一の弾丸なのだ。

 UEFAが出した数字によれば、フランスリーグはスペイン、イングランド、ドイツ、イタリア、の下にランクしており、ヨーロッパの中のトップ4にも入っていない。プレミアリーグやリーガとは違い、フランスリーグは世界では追いかけられても見られてもいない。

 つまり、PSGが欧州の舞台で注目されない限りは、ネイマールがテレビに映る機会はぐっと減ることになる。そのためにPSGはネイマールと契約した。フランスの国境を超え、国際的な注目を浴びるために。

 この冒険で費やす額は天文学的なものである。ネイマールの年俸、契約解除金、税金を考慮すると、これからの5年で、このオペレーションの費用は6億ユーロにも及ぶだろう。つまり、ネイマールを抱えることでPSGは毎年1億2000万ユーロを負担することになる。

 正当化するのが難しく、すべてのサッカーファンにショックを与えるような凄まじい出来事だ。そして目を向けてほしい、ファイナンシャル・フェアプレーと呼ばれるものを適用したとして、それらの金額をUEFAが認めるのかどうかということがまだわからない状況なのだ。だから、ネイマールのPSG移籍には、まだ描かれていない様々なストーリーが残されているのだと私は思う。

(取材・文:トニ・フリエロス【バルセロナ】、翻訳:長坂祐樹、協力:江間慎一郎)

【了】

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